多くの人は、自身の心身に現れた症状についてネットで調べたり、周囲の人に相談したりして、それを改善してくれるだろう場所に当たりを付けて訪れる。例えば、毛深さに悩んで美容脱毛サロンに行く女性は、それで問題が解決するのだろうか。吉岡範人理事長は、「多嚢胞性卵巣症候群という病気があり、10%の方に多毛症という症状が現れて、それで悩んでいる方がおられます。低用量ピルといった治療薬、医療脱毛がありますので、まずは相談に来てほしいですね」と、呼びかける。
つづきレディスクリニックでは、女性が直面する問題に対して、異なる角度からさまざまなアプローチを用意し、最善の選択ができる体制を用意している。産科をはじめとする一般婦人科、ガン検診や更年期障害、月経困難症や不妊外来などの各種の治療と予防はもちろん、健康維持、そして通常は医療から離れて提供されることの多い美容の領域までカバーする。その理由を尋ねると、「疾病治療と健康維持、美容という領域は、それぞれが密接なつながりを持っているためです。それぞれの専門家と協力して、女性の悩みに寄り添い解決に導くライフパートナーとして、役割を果たしていきたいと考えています」。


女性のトータルサポートを行う拠点病院へ


●最善の選択ができる体制を用意
●地域の人々のために、クリニックを継承する
産婦人科を経営していた実家の影響で、自身も産婦人科医を志した。幼少期、家族で外食をしていても、患者からの連絡が入ると食事は打ち切りになり家に飛んで帰る。患者の人生を何よりも優先する医師としての在り方を両親の姿を見て学んだ。進んだ大学での専門は婦人科腫瘍。その後勤務した大学病院では婦人科腫瘍に限らず産科や不妊の緊急対応などさまざまな状況下にある患者と向き合ってきた。
16年間同病院で経験を積み重ね、医師としての自信もついてきた頃に、あるクリニックを継承してくれないかという話が持ち込まれた。それが「つづきレディスクリニック」。院長ががんに罹患し、後継者を探しているという。院長の結晶ともいうべきクリニックを、自分に引き継ぐことができるだろうかという葛藤もあった。しかし、クリニックを頼りにし、愛してきた地域の人の想いを知り、自分のこれまでの医師としての経験を全て注ぎ込んで応えようと、2019年、つづきレディスクリニックを引き継いだ。




●女性の人生全てを支える医療の輪を
吉岡理事長は、クリニックと患者の接点を多く作ることを重要視する。「来院のきっかけが医療用脱毛であったり、家族の付き添いであったりなど何でも構いません。そこでクリニックで子宮頸がん検診が実施されていることを知り、検診を受けるきっかけになってくれたら」と願っている。婦人科腫瘍を専門とし、若くしてがんに罹患してしまう厳しさを目の当たりにしてきたからこそ、早期発見に懸ける想いがある。
患者が医療にアクセスしやすくなる取り組みは、以前から実施している在宅訪問診療、オンライン診断に加えて、2022年設立する訪問看護ステーションと広がっている。「医学的な知見をベースに専門性の高いケアを提供できれば、あらゆる女性の生活スタイルとライフステージに合わせたサポートが行えます。当院が掲げるトータルケアを求めて、当院の来院者数は急速に増加していますので、もっと多くの医師の方々や医療機関と協力し合い、女性に対するサポートの輪を広げていきたいのです」と、連携を呼びかける。
女性の人生そのものを支える仕組み作りへ、着々と形になっていく吉岡理事長の挑戦から今後も目が離せない。
吉岡理事長が、ある想いを明かしてくれた。「患者さんと同じようにスタッフを大切に思って日々接しています。スタッフを大切に思っていると、今度はスタッフが自ら患者のことを考えて自分にできることをしようと行動してくれるようになります」。長く業界で働いてきたスタッフが自らの長所が活かし、やりがいを持って働けるような組織作りを目指してきた。この組織作りがうまくいったことが、クリニックが急成長している要因の一つだと、吉岡理事長は振り返る。今ではこのスタッフを頼りに来院する患者も多いという。
吉岡理事長が見据えているのは、女性のための居場所の構築だ。「医療関係者のみならず、美容師やエステティシャンなど幅広い職種の方々が集まって、それぞれの分野から女性を支えるような、大きなサポートシステムを作っていきたいですね。ビル一棟使用して、女性のための施設が作れたらアクセスもしやすくて理想的でしょう。働く女性も子育てに忙しいお母さんも皆気軽に立ち寄って悩みごとを相談したり、問題を解決してもらったりできる場所を作り、女性たちの美しく健康的な毎日を支えていくこと。これが私の最終的な目標です」。