[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

飲食業界を若者が集まる業界にしたい

株式会社TEAM SUPER BEST
代表取締役
山本勇太
YAMAMOTO _YUTA

大学生が就職したくない業種ランキングで、毎年のように1位を獲得している飲食業界。「ハードワーク」「将来性がない」「柔軟な働き方ができない」など、ネガティブなイメージを抱かれることも多いこの業界を盛り上げたいと奮闘しているのが株式会社TEAM SUPER BESTだ。同社を率いるのは、株式会社ダイヤモンドダイニング(現DDグループ)で幹部として100店舗、グループ企業である株式会社ゴールデンマジックで社長として100店舗を展開した手腕を持つ山本勇太代表取締役。そんな彼に現在の事業、飲食業界を活気づけるための施策、今後の展望を聞いた。

独立後も飲食業界で挑戦を続ける日々

100店舗展開を幹部として、社長として、2度達成した山本氏。同じグループ内で、同じようなビジネスモデルによる事業拡大を続けてきたが、別の手法による店舗展開や企業文化を学びたいという気持ちから、2020年に株式会社TEAM SUPER BESTを起業。現在は前職での経験を生かし、コンサルティング業務と飲食店の経営を行っている。

「コンサルティングというと、壁を感じてしまいませんか。『一緒にやっていく』という意味を込めて、『and事業』と呼んでいます」と話すとおり、クライアント企業の社長や幹部と現場スタッフの間に入り、営業本部長のような立ち位置でその企業にジョイン。一般論やきれいごとは一切言わないことをモットーに、企業ごとに異なる課題を洗い出し、アプローチしている。

コロナ禍以降、飲食業界のセオリーは大きく変化。生き残りのためには長期的かつ大胆な施策を取り入れる必要があると山本氏は考える。「しかし、私が体験していないことを理由に提案が拒否されたことが多々あり、悔しい思いもありました。クライアントを納得させたいのでれば、直営店でブランディング、運営、働き方などに関する新しい施策を検証すればいい」という考えから始まったのが「Food&Drink事業」と呼ぶリアル店舗運営だ。

人材育成のための投資を惜しまない

クライアントの課題はさまざまだが、根本に共通しているのが人材に関する悩みだ。この課題を解決しないと、飲食業界の人材は高齢化し、さらに人手不足になることは想像に難くない。

そんな課題解決のために必要なのは、いかに楽しく、自信を持って働いてもらえるかということだ。そこで前職において山本氏が力を注いだのが、新人研修だった。入社から3カ月間を研修期間とし、新入社員1人に対してトレーナー1人を付け、研修はもちろん、不慣れな社会人生活までサポートする体制を敷いた。そして新人社員3人を1組にし、その中でワークショップをしたり、相談事を共有できたりする環境も整えた。「愛情もお金もいっぱいかける。そうすると、入社時は頼りなかった社員も、3年後にはたくましくなっています。それを見るとうれしくなりますね」と頬を緩める。

現在は、これをクライアント企業ごとにカスタムして提供。教育をする側にも活気が生まれ、会社の雰囲気が明るくなり、売り上げにも結果が表れ始めたという。「簡単に変更できるメニューや外装と違い、人を育てるのには時間がかかります。今変わるか、変わらずに3年後に苦しむか、飲食業界にはもっと人材育成に力を入れてほしいですね」と訴える。

アーリーステージ企業へ向けたオンラインの「飲食人の予備校」を開講

飲食業界の中でも規模が大きい企業には、その名前だけで入ってくる人材も少なくない。あえて小さい企業を選ぶ人材こそ、本当に飲食業界が好きな人が多く、そういった人物を支えたいという思いが山本氏にはある。しかし、小さな企業がコンサルティングを導入するには、費用の負担が大きい。そのジレンマの解消のために行うのが「ライブ事業」だ。これは複数の企業を対象とした低価格で受講可能なオンラインスクールで、2023年の夏頃からの提供を予定。自身も講師となり、月に3回から4回のライブ授業を行う。飲食業界で必要なマインドセット、店舗の長所と短所の見直し、コンセプト作り、具体的な数字の追い方の他、受講者同士でワークに取り組んだり、情報共有したりできる環境を整備。これには「北海道から沖縄まで各企業の中で奮闘している飲食人の横の繋がりを強め、様々な面で切磋琢磨出来る環境を用意し、各々が持つ素晴らしい取組や成果、経験を共有出来る新しい場を創りたい」と言う想いが込められている。

現在山本氏が掲げているのが、3度目の100店舗達成だ。今回は10のブランドを立ち上げ、それぞれ10店舗展開をすることによる達成を目指している。ブランドの1つでは、昼は放課後等デイサービス、夜は飲食店に変わるという一風変わった業態を手掛ける予定だ。放課後等デイサービスには興味があり、見学に行ったところ、収入の面からアルバイトを掛け持ちしている職員がいる事を知った。「どこか別の場所で仕事をするのであれば、同じ店舗で働けるほうがいい」という考えから生まれたアイデアだ。これは職員だけでなく、通う子どもたちのためにもいい施策になりうる。発達障害などを抱えている子どもは、アルバイト探しや、卒業後の就職先に悩むことも多い。しかし、放課後等デイサービスで幼い頃から人となりを見て、コミュニケーションを築けていれば、そのままその店舗で働ける可能性もあるだろう。

ブランドの中には、現在の社員の働き方に配慮したものもある。一般的な企業の定時と同時刻に退社できる事業形態を採用することで、ライフスタイルに合わせて社内異動をし、働き続けられるようにするという理想も描いている。どのようなブランドにするにしろ、山本氏の「飲食業界を元気にしたい」という思いに変わりはない。

山本勇太

RECORD

株式会社TEAM SUPER BEST
代表取締役山本勇太
埼玉県出身、1978年生まれ。中央大学経済学部卒業。2004年にアルバイトとしてダイヤモンドダイニングに入社。店長、エリアマネージャー、統括部長を経て、2009年にゴールデンマジックを子会社として設立し代表取締役に就任。2020年に独立をし、株式会社TEAM SUPER BESTを設立。