[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

アスベスト除去からプロレス興行まで人の輪広げて挑戦続ける

株式会社リムファイン 
代表取締役
田村勝成
TAMURA_KATSUNARI

防火材として広く使われたが、微細な繊維を吸うと人体に有害な影響を及ぼす石綿(アスベスト)の除去に約30年取り組んできたリムファインの田村勝成代表取締役。飛散防止などの技術から役所との交渉、営業まで、さまざまなノウハウを現場で学んできた。経験と人とのつながりを新たな事業につなげている田村代表の挑戦を追った。

アスベストのオールマイティーに

田村代表は、アスベスト除去の営業事務に就いたことをきっかけに、現場に出て一から工事について学び、現場監督として施工管理をするようになり、アスベスト工事をオールマイティーに担ってきた。「アスベストの業種に関わらず、1から10まで全部できますよってなかなかいないと思う。営業は営業、現場は現場しかできないことが多く、アスベストの工事では、役所との対応などいろいろあるのですが、業者によってはそれぞれ専門があって、『これ以上はできません』と言われたりするんですが、私は全て経験して対応できる」と語る。

アスベスト工事のひと筋でスペシャリストになった田村代表。「お世話になった社長さんが亡くなって、その後を継いだ30代の若い社長が全て自分でやっている姿を見て、『誰よりも古いのに、自分は何やってんだろう』と思った」と起業を決意した。

さまざまな現場を踏んできた田村代表は、アスベスト除去のノウハウを強みに全国で工事を受注できた。「例えば九州で仕事があったら、九州にも業者がいて、こちらは東京から向かうのに移動費などの経費がかかるのですが、九州より東京の方が工事に関する規制が厳しく、クオリティーを下げずに短い工期で安く仕上げるノウハウを持っているので、見積もりで勝てる」と胸を張る。こうしたノウハウを武器に、多数の協力業者との連携をして全国のアスベスト工事を受注してきた。

コロナ禍でPCR検査に応用

そんな田村代表はコロナ禍で新たなビジネスの種を見つける。感染拡大当初、医療機関が新型インフルエンザが流行した時に使ったブースを活用して、PCR検査をやっているのがテレビで紹介されたのを見て、「なんてお粗末な物だと思った。アスベスト除去工事は、除去よりも外部に飛散させないように、現場を密閉して減圧することが重要。検査ブースも同じ原理なので、自分ならもっといい物ができると直感で思った」といい、そこからわずか1カ月で製品化に成功する。

電話ボックス型の検査ブースは組み立て式で、ケースに収納できるAED(心臓救命装置)のように緊急のときに出して使用する、使ったらまた収納するというような形でゴルフバックぐらいの大きさに全部収納できるタイプを開発した。「感染学の専門家などに『コロナに使うのはもったいない』と絶賛されて、むしろ少し簡易なものにして、安くしてほしいと言われました」と苦笑する。

こうして完成したPCR検査ブースだが、販売戦略で誤算もあった。医療設備は専門業者を通して販売するという慣例を知らず、病院に直接交渉していた。「最初は独自でいくつもりでやっていてうまくいかないので、専門業者におまかせした」といい、現在は数百の医療機関などで導入されている。

光触媒による抗菌から広がる事業

新たな挑戦への意欲を燃やす田村代表は、自分を知らない業種の人と話して、自分なりに考えることを心がけているという。そうした姿勢が光触媒による抗菌事業につながった。「中国のホテルで光触媒の抗菌工事をやりたいという話があって、アスベストも環境関係の工事なのでできないかと紹介された。小規模の店舗などで試験的に無償で施工させてもらって、手がけることにしました」という。コロナ禍の工事で、現地に資材を送って、Zoomなどを使って、リモートで現場に指示を出すなどして仕上げたという。

新たな事業がさらなる挑戦へのきっかけとなる。光触媒による抗菌事業は、観客を入れるイベントなどで導入されており、知人を介してプロレス興行の抗菌作業を請け負うことになった。プロレス関係者と親しくなり、「頑張っている人たちにファイトマネーを出したり、スポンサー的なこともやってあげたいと思うようになった」という。

こうして3月に福岡でプロレス興行を行うことになった。「福岡に別会社を設立したPRも兼ねて、赤字もいいかと思っていましたが、経験者から『自己満足ではダメ、最低トントンにしないと』とアドバイスされて、何とか黒字にしようと頑張っています」と語り、スポーツ事業を新たな柱にすべく力を入れている。

人のつながりを大切にして、それを事業の拡大につなげている田村代表。全国の協力業者の連携強化のための仕組みづくりを目指し、さらに後進の育成にも取り組んでいる。「既存の業者と協力するだけでなく、自分が育てた人間が独立して、仕事してくれるという環境にしたい。自分も1から事業を立ち上げたので、最短ルートでいけるようにしたい」といい、独立を目指す社員を取締役として、事業許可に必要な5年間の事業者の経験を積ませるなど支援をしている。田村代表は人の輪を広げ、チャレンジを続けていく。

田村勝成

RECORD

株式会社リムファイン 
代表取締役田村勝成
1971年、福岡県生まれ。高校卒業後、アスベスト除去の営業から現場監督などを約30年務める。2019年、株式会社リムファインを設立、代表取締役に。