[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

偽りの多いスクール業界に挑む、誠実な教育の再構築

株式会社一振り
代表取締役社長
高橋健太
TAKAHASHI_KENTA

SNSの発展により、デザインや動画編集は今や必須スキルとなった。しかし近年、「入会金を払ったのに、結局はYouTubeで調べてと言われた」といった声も聞かれるようになり、実績が不透明な講師によるオンラインスクールが乱立している。その結果、スクール業界全体が「怪しい」と見なされる風潮も広がっている。そんな現状を変えようと、「誠実な教育を取り戻したい」と立ち上がったのが高橋健太社長だ。実績を明確に示し、生徒一人ひとりと真摯に向き合う姿勢を貫いている。

悪質なスクール事業者の乱立

情報商材やスクール業界の問題点として、実績のない講師が高額な料金を取りながら、ほとんど価値のない内容を提供していることが挙げられる。高橋氏のスクールに来る生徒の多くは、副業やフリーランスとしてデザインや動画編集をしているが、低単価の案件に苦しみ、疲弊している人が多い。

高橋氏の営むスクールにはスタッフはいない。主催者である高橋氏自身が、生徒一人ひとりと向き合い、入会面談や添削などすべて自分で行い、生徒との信頼関係の構築に力を入れている。

他のスクールのように、「今日中に申し込めば割引」といったあおり文句や心理的テクニックを使わず、入会を急かさない姿勢を取っている。生徒が不安なく入会できるよう、質問に丁寧に答え、考える時間を与えることを大切にしているのだ。

高橋氏は、自身の学びを通じて培ったデザイン、映像制作、2D/3DCG、撮影など多岐にわたるスキルを生徒に教えており、生徒それぞれの目標に応じた道を共に目指している。デザイナーになる人、映像クリエイターとしてフリーランスで活動する人、既存の仕事に新しいスキルを生かして単価を上げる人など、生徒一人ひとりに寄り添いながら指導を行っている。

「愛を持って人と接する」ことの原点

高橋氏が経営において大切にしているのは、「愛を持って人と接すること」。なぜそこまで人に愛を向けられるのかという問いに対し、「これまでの経験があるからこそ」と語る。

高校2年生のとき、バイク事故に遭い、記憶が残らないほどの大事故を経験。現在でも障害が残っている。それまで情熱を注いでいたダンスを続けることができなくなった高橋氏は、その経験を機に、人生観が大きく変化した。

当時、多くの人に助けられ、「自分は本当に愛されていた」と初めて気づいたという。言葉だけでなく、行動で愛情を示してくれた人々の姿に触れ、「今度は自分が誰かに返していきたい」と思うようになった。

仕事においても、ただ依頼されたことをこなすのではなく、愛情を込めて向き合うことで、より良い関係が築け、良い作品が生まれると考えている。そのため、案件を選ぶ際は「単価」よりも「愛情を注げるかどうか」を大切にしている。

さらに、自身の仕事に生徒を巻き込み、大手企業や芸能関係の案件にも一緒に挑戦。「憧れのアーティストや作品に携わる」といった、普通のスクールでは得難い経験を提供している。

「何者でもなかった人が、何者かになれる」そんな場所をつくっていくことこそが、高橋氏の目指す未来である。

「スーパークリエイター」になることより、毎日楽しく生きること

現在、スクールには約200人の受講生が在籍しており、年齢層は20代後半から60代までと幅広い。さまざまなバックグラウンドを持つ人々が、デザインや映像など多様なスキルを学んでいる。受講生たちは、スキル習得を通じて収入を増やしたり、キャリアチェンジを実現したりと、それぞれの目標に向かって前進している。

高橋氏は、「スクールの目的は、単に収入を増やすことではなく、生徒が楽しく充実した人生を送れるようになること」だと強調する。一部の人だけでなく、自分のもとで学ぶすべての生徒が、会社員以上の収入を得られるような環境づくりを目指している。

自身も「スーパークリエイター」になることより、毎日を楽しく生きることを重視しており、その考え方を生徒にも伝えている。スキルや収入を得るだけでなく、人生そのものを楽しんでほしいという思いが根底にあるのだ。

「人に対する愛情を持って仕事に取り組むことで、自然と選ばれる存在となり、結果的に収入も上がっていく」そうした信念を胸に、人とスキルの可能性を信じたスクールづくりを続けている。

「高橋帝国」というユニークなスクール名。その由来について高橋氏に尋ねると、もともとスクール事業を始める予定はなく、クリエイターとして活動していくつもりだったという。しかし体調面を考慮し、在宅で収入を得られる手段としてコンテンツ販売をスタート。すると、モニター参加者の間で自然とつながりが生まれ、やがてコミュニティとしての形を成していった。

高橋氏は、デザイン、CG、撮影、映像など多方面にわたるスキルを持っており、その豊富な技術と知識から、生徒たちから次第に「エンペラー(皇帝)」と呼ばれるようになった。それが「帝国」という名前の由来になった。

「王国だと一人の王が全体を統べるイメージですが、帝国はさまざまな国の王たちが集まって成り立っている。うちのスクールも、それぞれに得意分野を持った人が集まり、一つの大きな集団になっていけたらと思っているのです」。

そう語る高橋氏の言葉には、「帝国」という名に込めた想いと、仲間たちと共に成長していく未来へのまなざしが込められていた。

高橋健太

RECORD

株式会社一振り
代表取締役社長高橋健太
東京モード学園グラフィック学科卒業。2012年、株式会社スタートトゥデイ(現:株式会社ZOZO)にデザイナーとして入社。4年間、デザイナーおよびシステムエンジニアとして勤務した後独立。その後、東京モード学園の映像講師を4年間勤め、2023年に株式会社一振りを設立。「高橋帝国」というオンラインスクールの主宰も務める。