[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

マーケティング×IT×コンサルティングで日本の生産性を上げる

セールスシード株式会社
代表取締役
菅生一郎
SUGAO_ICHIRO

日本の生産性の低さが問題視されて久しい。ITシステムの導入による生産性の向上が言われ、多額の投資がされているにもかかわらず、OECD加盟国における生産性指標の順位は下から数えた方が早いままだ。この状況を憂い、「日本企業のIT化の進展と生産性の向上のギャップを解消するために会社を興しました」と語るのは、広島に本拠を置く、セールスシード株式会社の代表取締役 菅生一郎氏だ。マーケティングとIT技術両方の専門家である菅生氏に、新設間もない東京オフィスで話を聞いた。

ITシステムの活用を支援し、遠方からも依頼が急増

全面の窓から景色が開け、表を走る車の流れや電車が見える。明るい陽光が射す会議室で、菅生氏が迎えてくれた。菅生氏は上智大学でマーケティングを学び、複数の企業でマーケティングに携わってきた。2013年には神戸大学でMBAを修めた、マーケティングのプロフェッショナルだ。同時に、応用情報処理技術者とITコーディネータの資格を有する、ITの専門家でもある。

菅生氏が率いるセールスシードが提供するサービスの柱は3本。Salesforce導入コンサルティングとカスタマイズ開発、Webマーケティング支援、そして業務分析からシステム活用に至る幅広いコンサルティングだ。
ITシステムは構築・導入して終わりではなく、その先の活用が重要。そこはシステム開発企業の範疇を越え、コンサルティング会社の出番だ。しかし、ITのわかるコンサルティングファームのフィーは高額であり、中小企業が賄うのは難しい。

「そこを担おうと思い、2016年に創業しました。一人で仕事をしていましたが、3年前から依頼が急増し、メンバーを増やしています。東京のクライアントも増えたので、ここに東京オフィスを開設したところです」と菅生氏は語る。

クライアント企業の中にある“種”を見つけ、共に育てる

菅生氏のポリシーは、「答えはお客様の中にある」だ。セールスシードの社名も「売り上げや付加価値の“種”は社内にある」ことを意味している。

「さまざまな企業のお手伝いをしていますから、ある程度の業種知識は持っています。とはいえ、お客様の方がずっと詳しいのは当然ですよね。会社のことを一番詳しくご存じなのもお客様。私たちの仕事は、『教える』ではなく、『引き出す』。そこに私たちが持つ、マーケティングやITの知識と経験を合わせて、解決策を一緒に作っていきます」

「答えはお客様の中に」の典型的な事例が、Salesforceを導入したのに営業部門が使わず、費用が無駄になっていたケースだ。「システムが使いづらいからだ」と言う経営者を菅生氏がなだめ、現場のヒアリングを丁寧に重ねた。その結果、使わない原因は営業職の評価方法にあることが明らかになり、人事施策の検討が始まった。
「使われない原因はシステムにあると考えられがちです。実際にはシステム以外のところにある場合も多く、そこを見極めることが重要なのです」

このような問題の発生を未然に防ぐためにも、菅生氏に協力を仰ぐシステム開発会社も多いそうだ。

家業を立て直した経験が、今に生きる

酒造業を営む家の長男として生まれた菅生氏は、跡継ぎとして育てられ、小学校時代から経営が身近なものだった。大学でマーケティングに出会い、一生の仕事にすると決意。

卒業後は、ダイレクトマーケティング研究所でキャリアをスタートさせる。間もなく、インターネットが勃興し、マーケティングとIT技術が融合し始める。その可能性に魅かれ、システム構築会社に転職し、半年で社長賞を獲得。サプライチェーンマネジメントで名をはせていたDELLに転職して、順調にキャリアを重ねていた。

ところが、父が倒れ、急遽広島に戻ることに。実家は酒造りを止め、コンビニエンスストアを運営していたが、倒産寸前だった。寝たきりとなった父の代わりに昼夜問わず働き、ある日倒れ、死を覚悟する。「幼い子どもを残していくことが無念で。助かったときには『精一杯、生き切らなければ』と思いました」苦労をかけられた父に感謝の言葉を伝えたところ、事態が急に好転。スタッフを育て、店を任せられるようにして、2店舗、3店舗と拡大。現在も代表取締役を務めている。

「10年間、小さな会社の立て直しに奔走したことが、セールスシードの仕事にも生きています」

同社のメンバーは菅生氏の他に、7名。多様な視点を持てるように、専門性とキャラクターの異なる精鋭を集めたという。

「一人の頃、造園会社様の商品の売り上げを130倍にするといった実績を上げていました。最近は、Webマーケティング事業はメンバーに任せており、地域情報誌の運営をサポートしているクライアントが賞を獲るなどの成果が出ています」

今後は、DX推進のための自習型研修サービスや、クラウドサービスに特化したPC再生品販売を事業に加え、主軸事業を補完していく。

「同業者がたくさんいる東京で、広島の小さな会社に依頼してくださるクライアント様が増えていることが、ありがたく、自信にもなっています」 全国の企業からも指名を得れば、東京や広島から向かうことも増える。期待と信頼に応えられるよう、メンバーを増やし、対応力を強化していく。自分の代わりにリードコンサルを務めるメンバーも育成したいと菅生氏は目を輝かせる。

「先の見えない中、激務で疲弊していた状態から、東京にオフィスを構えられるようにまでなりました。感謝を忘れず、これからもお客様と同じ目線で丁寧に仕事をしていきます」と取材を結んだ。

菅生一郎

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セールスシード株式会社
代表取締役菅生一郎
広島県生まれ。1994年、上智大学 経済学部経営学科卒業。宝積飲料株式会社のマーケティング室長、デル株式会社のマーケティング職を経て、2004年、家業である山陽一酒造株式会社の代表取締役に就任。2013年、神戸大学専門職大学院MBA修了。2016年にセールスシード株式会社を設立。2017年〜2020年、広島女学院大学国際教養学部 非常勤講師 マーケティング論担当。神戸大学MBA、応用情報処理技術者、ITコーディネータ保有。来年度開校(2024年4月)予定の神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校で講師を務める予定。