[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

「We can work it out!」精神で
安全なモノづくりに貢献したい

ナノテックシュピンドラー株式会社
代表取締役社長
シュピンドラー千恵子
Chieko_Spindler

この方ほど、「チャレンジ」という言葉が似合う女性も少ないかもしれない。ナノテックシュピンドラーの代表取締役社長、シュピンドラー千恵子氏のことだ。
同社の主な業務は、管理医療機器及び体外診断用医薬品の認証、認定検査試薬の確認審査、製品の安全性評価、各国認証取得代行の4つ。専門的な言葉が並ぶが、要するに国などのお墨付きをもらわないと市場に出すことができない製品に対し、民間企業として認証を行う役割を担っているわけだ。

薬事法改正で民間認証機関に

大学卒業後、航空会社の客室乗務員をしていた千恵子社長は、それまでとはまったく異なる業種で、しかも外資系である半導体装置メーカーに転身。大胆なチャレンジだが、エンジニアリング以外の技術営業を含むすべてを受け持ち、着実にキャリアを積んでいった。その後、1995年に同社が日本市場を撤退する際、日本の顧客へのサービスをドイツ人エンジニアと共に継承することになり、個人事業をスタート。「そのときのお客様から、イギリスの工場に設置する機械が欧州規格に不適合で出荷できず困っている、何とか助けてほしいと頼まれ、本業以外にコンサルティングをするようになりました」と振り返る。

97年、欧州に製品を輸出するためには欧州指令に適合しないと市場に流通できず、日本の機械・電機メーカーなどがその対応に苦慮しているという新聞記事を見た千恵子社長は、「私たちが手助けできるのはこれだと直感し、欧州市場への流通を助けるための欧州指令適合支援を始めました」という。こうして欧州の認証機関とパートナーシップを組み、シュピンドラーアソシエイツ(現ナノテックシュピンドラー)を設立。代表取締役社長となった。
以来、25年にわたり事業を展開する中では、2005年に日本の薬事法が改正され、これまで国の認可だった医療機器の認証が一部民間にも門戸が開くことを知り、「認証機関としての条件を整えるプロジェクトを立ち上げ、産学共同で対応できる体制を整え、同年、管理医療機器認証機関として厚生労働省に登録されました」と話す。これが大きなターニングポイントとなった。

国内唯一の認定検査試薬の確認審査業務も

こうして、常にチャレンジを続けてきた千恵子社長だが、経営をする中で大切にしていることを伺うと、まず「顧客ファースト」「三方よし」「世のためになること」という堅実な答えが返ってきた。そこには、「最初はたった二人で始めた会社で、それがお客様の信頼を得て成長していくためには、やはりこうした姿勢が不可欠でした」という思いがある。
その上で、常に大切にしていきたのが、何でもやってみようという「チャレンジ精神」で、それを象徴する言葉として、「We can work it out !(やればできる)」を大事にしてきたと話す。「これはドイツの認証機関の窓口業務をして、文化の違いに苦労しながらも奮闘していたとき、日本企業の方から言われた言葉で、『無理なことを頑張ってやってくれているね』と言って褒めてくれ、この言葉を教えていただきました」。

冒頭に紹介している4つの主要業務のうち、「認定検査試薬の確認審査」も千恵子社長らしいチャレンジから始まった業務だ。国の承認が必要な新規性が高い検査試薬の場合、メーカーは臨床試験等を行って書類をそろえ申請するが、申請後承認までの長い期間、その検査試薬は試験的にも使えなくなってしまう。「そこで、私たちが確認をすることで、承認までの期間も使用できるようにするという業務を行っています。これは、日本で当社しか行っていません」という。

ベンチャー精神を忘れずにつねに最善にチャレンジ

そんなチャレンジを行ってきた千恵子社長が現在取り組んでいるのは、国際認証ISO13485(医療機器の品質管理システム)の認証機関になることだ。認証機関とは、もともと世界中の国家規制をその国の認可を受けて代行で行う機関である。そして、技術基準を作ったり、運用したりするこの制度は欧州が先行している。そのため、欧州資本系の大手が日本でもその役割を担っており、過半数はそれらの機関で、国際認証を発行しグローバルに展開しているという。「私たちナノテックシュピンドラーは、そうした機関とは生い立ちが異なるベンチャー企業としてスタートし、他社と比べ業歴も浅いため、まだ日本の薬機法の認証しか体制ができていません。そこで、より多くのお客様のニーズにお応えするため、国際認証の認証機関となる準備を進めているのです」という。準備は順調に進み、4月から業務開始予定で、今年中に認可を受け認証発行が実現することを目指している。

さらに、先進国の高齢化や、IoT化などにより、医療機器産業は進化を加速しており、医療機器や対外診断用医薬品メーカーの一助となるべく、サービスの幅を広げていきたという千恵子社長。「たとえば、安全性評価試験から認証までのワンストップ化や、グローバリゼーションのワンストップ化、海外展開などを目指していきたいです。そして、大手では気にとまらない、ベンチャー出身だからこそできることにチャレンジし、生命を助ける仕事をもっと創造していきたいと思っています」と前を見据える。千恵子社長のチャレンジはまだまだ続く。

シュピンドラー千恵子

RECORD

ナノテックシュピンドラー株式会社
代表取締役社長シュピンドラー千恵子
大学卒業後、全日本空輸(ANA)入社。退社後、GMNゲオルグ・ミュラー・ニュルンベルグ入社。1995年上記日本法人解散のため業務承継し個人事業開始。97年シュピンドラーアソシエイツ(現ナノテックシュピンドラー)設立、現在に至る。01年「第5回千葉県ベンチャー企業経営者表彰ひまわり育成基金賞」受賞、06年「平成17年度ニュービジネス大賞アントレプレナー賞」受賞、20年「DLC工業会功労賞」、21年 全国経営者表彰「日刊工業新聞社賞」受賞。