[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

SNSを学ぶことが当たり前の社会を目指して

株式会社S.Line
代表
岡田颯太
OKADA_SOTA

SNSの隆盛により、インフルエンサーという新しい職能が生まれた。企業のマーケティングにおいても、SNSは欠かせないツールとなっている。SNSコンサルティング事業やSNSマーケティング支援事業を営む、株式会社S.Line代表の岡田颯太氏は、SNSを「何者でもない人が何者かになる手段」だと言う。それは、岡田氏自身がSNSに力を入れることによって、数多くの危機を乗り越えてきたからだ。Instagram運用のコンサルティングを通じて、20名以上の「万垢(フォロワー1万人以上のアカウント)」を生み出している岡田氏に、自身の経験とSNSに懸ける想いを聞いた。

コロナ禍で持て余した時間が転機につながる

岡田氏は、群馬県太田市で教員の両親のもとに生まれ育ち、群馬大学の教育学部に進んだ。しかし、教員になることを強く志向していたわけではないという。

「両親の忙しさを目の当たりにしてきて、教員の仕事の大変さもよくわかっていました。両親も教員になることを勧めず、むしろならない方がいいというくらいでした。それなのに教育学部に進んだ理由は、数学が好きで、恩師が二人とも数学の先生だったこと、両親や恩師のような人たちを作る学部がどんなところか関心を持ったことです」

高校時代は、中学から続けていたバドミントンに没頭しており、「部活漬け」の日々を送った。大学でもバドミントン部に入部するが、あまりの忙しさに「他のこともやりたい」と思うようになる。退部の理由を作るために、バドミントン部のレギュラー全員と対戦して勝利。サークルに移り、学生生活を謳歌する。

3年になった春にコロナ禍が始まり、講義が全てリモートに。往復2時間の通学時間が丸々浮いたのに加え、1,2年で単位は随分取っていたために、受講するのは週1,2回。時間を持て余すなか、メンタリストDaiGoの動画をたまたま目にする。それが岡田氏の人生を大きく変えることになった。

新卒で入った会社を2ヵ月で退職。持っている選択肢から選んだInstagram

「動画でDaiGoさんが『読書をすると良い』と言って、本の紹介もしていました。DaiGoさんの話は論理的で説得力があると感じ、勧めている本を読んでみようと思ったんです。時間はたっぷりあるので、1日2冊ペースで読んでいったのが、いろいろな意味で転機になりました」と岡田氏は振り返る。

ある時、DaiGoが「教員は世間を知らない」と言うのを聞き、「確かに一般社会を知らない」と思ったという。教員になるとしても一度は一般社会を経験をしてみたほうが良いと考え、卒業と同時に地元企業に就職。しかし、上意下達の企業体質にストレスが溜まっていってしまう。

「ここにいても先がないと思い、転職活動もしていました。でも、転職先が決まる前に身体を壊してしまい、辞めざるを得なくなりました」

「何とかして食べていかなければ」そう思った岡田氏は、その時点で持てる選択肢の中で伸びたものを最大化させようと考える。学生時代からブログを書いており、YouTubeも手掛けていた。Webライターの仕事やプログラミングにも挑戦し、毎日16時間仕事をした結果、一番伸びたのがInstagram。そこで、Instagramに軸足を置くことに。

フォロワー7.3万人。過去の学びと継続が「絶対に負けない」自信の源に

2023年12月現在、岡田氏のInstagramアカウントのフォロワーは7.3万人に及ぶ。そのアカウントを通じてのPR活動や、個人や企業のコンサルティングを中心に事業を展開している。コンサルティングでは、クライアントが自走できるようになることを目的に、SNSの効果的な運用の仕方を教える。教えることをビジネスとしてではなく、関係値を築き上げていくことと捉え、グループ・チャットを通じたサポートに力を入れる。

Instagramに関して「他の人には絶対に負けない自信がある」という岡田氏。その自信の源の一つは、「人に何かを伝えたり教えたりする能力値が高い」こと。教職一家で育ち、教育学部で教育学を学んだことが、今の仕事に生きているという。

「インスタの研究も実践も、誰よりもやり切っている自信がある」という岡田氏の座右の銘は「継往開来」。中学のときに、授業参観で発表するために選んだこの言葉が、自身の基軸になっている。

「継続を繰り返すと道が開けてくるという意味ですが、僕はそれを本気で信じています。継続すれば勝てると確信しているので、続けると決めたことは何があっても続けます」

SNSを続けると決めているのは「何もない人がSNSによって変われることを自分も体現し続けたいし、それを伝え続けたい」から。彼は、SNSは自分を表現するための大切な手段と考えており、「誰もがSNSを学ぶことが当たり前の社会を作ること」を将来の目標に置く。

「今は、親や教師の世代が子どもたちに対して、『SNSは危ないから禁じる』という方針を取っています。それではリテラシーが上がらず、SNSで騙されたりする可能性を減らすことすらできません。まずは、SNSを使いこなす子どもに『すごいね』と言える大人を増やすことが必要だと思います。そのための活動も始めています」

先々は、SNSに限らずさまざまなことが学べる塾を地元に作りたいという岡田氏。自身もまだ知らないことだらけであり、SNSマーケティング以外のことも経験して「自分にとって『できないこと』をなくしていきたい」という。具体的に、リアル店舗の企画・運営に携わるなど、新しい事業も手掛けている。自身の経験を増やすことが、より多くの人の「人生を変えるきっかけ作り」につながると考える岡田氏の挑戦は続く。

岡田颯太

RECORD

株式会社S.Line
代表岡田颯太
群馬大学教育学部数学専攻卒。卒業後、新卒で地元の法人営業の会社に入社。新卒2ヵ月で退職し、フリーランスに。InstagramなどのSNSを活用したマーケティングを事業化し、2023年3月に株式会社S.Lineを設立し代表を務める。