[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

今後、より広がる訪問看護市場を
けん引する存在でありたい

ブライトライフ株式会社
代表取締役
中村真也
NAKAMURA_SHINYA

高齢者の増加に伴い、介護需要が高まり続けている日本。対策として国が掲げているのが、地域包括ケアシステムだ。介護を必要としている人が、住み慣れた場所で生活を続けられるよう、地域の医療・介護専門職が協力し、日々サポートをしている。ブライトライフ株式会社は、このシステムの一端を担う企業で、千葉県、埼玉県、大阪府を拠点に訪問看護サービスを提供。「私たちがこの業界をけん引する気概で挑んでいる」と意気込む、若きリーダー・中村真也代表取締役が描く訪問看護の可能性に注目する。

最後の時間を自分らしくいられる場所で過ごしてほしい

会社経営をする両親の背中を見て育った中村氏は、経営の面白さと同時に厳しさをも学んでいた。「経営者になりたい」という思いを抱きながらも、失敗したときに備えて何か技術を身に付けようと思い、そこで選んだのが看護師の仕事だった。聖路加国際病院で3年間の経験を積んだ後に独立。「看護の仕事の楽しさを知ったので、それを事業にしたいという思いがありました」と創業の理由を語る。

同氏は学生時代に受けた研修の経験から、老人介護保険施設で暮らしている人の多くが、望んで入居したわけではないことを知っていた。中には、80人の利用者をたった一人で見ている施設もあり、「これで本当に利用者のQOLを高められるのか」と疑問を抱く。

「自分のこととして捉えたとき、仕事を頑張って、たくさん税金を納めて、最後にたどり着いた場所に満足できなかったら辛いと感じました。住み慣れた自宅で暮らすためのサポートを行う訪問看護の果たせる役割は大きいと感じています」と強く語る。

裁量権を与えて能力を伸ばすことで、優秀な人材を育成

「訪問看護は、いわばフランチャイズ」と中村氏が例える通り、国が決めた厳格な制度の下、運営を行わなければいけない。他の企業との差別化を図るために必要なことを考え続け、たどり着いたのが「優秀な人材」だった。そして、優秀な人材を育成するために大切にしているのが、社員に裁量権を与えることだ。

同社では現在6つの事業所があり、それぞれ異なる運営スタイルが確立されている。例えば、業界の慣習になっている朝礼と夕礼。これを一堂に会して必ず実施する事業所もあれば、直行直帰を可能にしている事業所もある。「法律で制度がしっかりと固められているのに、さらに会社で厳しいルールを敷く必要はない」というのが同氏の考えだ。

それ以外にも、改善案は各事業所で検証し、いい案は会社全体で共有する。「こういった改善活動が今は一番楽しい」と笑顔を見せる。これは、教育制度の充実をうたった他社の訪問看護ステーションのうまくいかなかった運用事例を見たことも影響している。「どれだけ教育制度が優れていても、それを受ける人にやる気がなければ意味がありません。それよりも、裁量権を与えて個人のポテンシャルを生かしたほうが人は成長できます」と言う。

将来的には自社がより市場で求められると確信

中村氏は「新しい働き方ができる」という点で、訪問看護に魅力を感じている。病院やクリニックで看護師として働く場合、施設は自分のホームであり、患者に対して主導権を握ることもできる。一方で訪問看護の場合は、患者のプライベートな空間に入ることから、寄り添うことに重点を置いた対応が可能だ。また、医療施設内で働いていると見えづらい売り上げが可視化されやすく、それが看護師のモチベーションにつながることもある。

そして、能力とモチベーションを備えた看護師は、今後一層市場で求められることになると同氏は予測する。現在、高齢者の医療費の自己負担率は1~2割だが、社会保障費が逼迫している昨今、今後自己負担率が上がることは想像に難くない。自己負担率が上がった場合、高い医療費を払うからにはよりよいサービスを受けたいと思うのは当然だ。ましてや、物がない時代に生まれ育った現在の高齢者とは異なり、今後高齢者になる世代は高度経済成長を体験しているため、質の高い看護・介護を求めるはずだ。

「そうなると、ものをいうのが、やはり『人』でしょう。当社は優秀な人材がそろっており、どこよりも患者さんに求められると自負しています」と自信を見せた。

同社の事業は順調に見えるが、8期目を迎え、課題も多いという。7年で3府県に6事業を開設したスピード感は自身でも評価しているというが、現在は地盤固めも必要だ。2023年度中には、大阪府内に施設内訪問看護ステーションを1つ、東京都内に1事業所を開設。中長期的には15事業所を目標としているが、スタッフとなる看護師の採用と定着率を高めることが鍵だ。

「『会社とリーダーは船、スタッフは波』という例えがありますよね。まさにそれで、会社が大きくなるためには、より多くのスタッフが必要です。そして、そのスタッフが協力して同じ方向を向けば、目的地まですぐにたどり着くことができます。でも、そうでなければ、なかなか進まなかったり、転覆してしまったりすることすらありえます。だから私は、スタッフに支えられているという意識がありますね」と真剣だ。今後、ますます需要が高まることが予想される訪問看護。このチャンスを逃さず、スタッフとともに、よりよいサービスを提供したいという気概が見えた。

中村真也

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ブライトライフ株式会社
代表取締役中村真也
1991年生まれ、大阪府出身。専門学校卒業後、聖路加国際病院に入社。2016年に独立し、ブライトライフ株式会社を設立。現在は千葉県・埼玉県・大阪で計6カ所に訪問看護ステーションを構えている。