ポータルサイトを一から立ち上げ、さまざまなマーケティングを実践し、月間1億PV(ページビュー)を超えるまでに成長させた経験を生かして起業したNYマーケティングの中川裕貴代表取締役。ウェブマーケティングのスペシャリストとして、良質なビジネスを展開する多くの企業を支える中川代表の思いを聞いた。


実践的ウェブマーケティングで良質なビジネスを支援


●大規模サイトをゼロから作る
中川代表は21歳の時、ウェブシステム会社に入社し、ナイトレジャーのサイト「ポケパラ」をシステム開発から立ち上げた。事業責任者として、記事の制作からSEO(検索エンジン最適化)対策、SNSなどを活用したマーケティングに取り組み、サイトの成長に貢献。最大で月1億PVを達成するまでになった。「大規模サイトをゼロから作り、サイトの細部まで全部理解して、どういうところを直したらいいかというSEOを10年以上やってきたノウハウは大きい。最後は社長もやらせてもらいました」と語る。
そこまでサイトを育ててきたが、コロナの影響を受け突如廃業することになってしまう。「ちょうどコロナの第一波のころ、廃業という不可抗力でフリーランスになりました」という中川代表は、SEOの経験を生かして、外部のコンサルティングという形で独立。「サイトを運営する側と支援される側では全然違うので、最初はどこまで通用するか不安でした。とはいえ、結果を出せました」と手応えをつかみ、1年後にNYマーケティングを設立した。
さまざまなジャンルのECサイトを中心にSEO支援に取り組み、商品点数約7000点のサイトの売り上げを4カ月で前年比24%、数千万円向上させるなどの実績を上げた。「大規模サイトのSEO対策は、大手が中心で、しかも月100万円以上かかるものも多い。その半額程度の費用で同レベル以上のサービスが提供できる」と力を込める。
●ビジネスの頼れる“右腕”社外CMO
こうして自信を深めた中川代表は新たな事業に取り組む。それが「社外CMO(最高マーケティング責任者)」だ。「中小企業では、なかなか優秀なマーケターを採用できなかったり、採用できても高給だったりするので、私たちが社外CMOという形で参画し、マーケティング戦略の設計から実行支援まで行います」という。
社外CMOでは、週1回の打ち合わせ程度のものから、社内のマーケティング担当の教育、マーケティング戦略の全体設計、業者との打ち合わせに同席し、社長の右腕としてかかわるものまで、希望によって変えているという。
1年間本格的にかかわっている企業では、ウェブの流入が9倍になり、ほかの企業では導入から1カ月でウェブからの問い合わせが2倍になるなどの成果を上げている。中川代表は「中小企業ほど、元々いいサービスや商品を持っているけど、その広げ方が分かっていないというところが多い。また、それができる人材を確保するのは難しい。特に地方の中小企業は、マーケティングまで人もお金もかけられないので、そうした本当に良いサービスを提供している企業の成長を支えたい」と社外CMOサービスを提供している意義を語る。




●リアルビジネスへの関心も
起業から1年半、約30社の企業を支援し、ウェブマーケティングで着実に成果を上げている中川代表は「無理な組織の拡大は考えず、自社の強みを生かした領域でクライアント1社1社丁寧に結果を出していきながら、適切な形で徐々に組織拡大をしていこうと考えています。まだまだ全国にSEO対策で困っている企業は多いので、規模に応じて支援できる企業を増やしていきたい」と先を見据える。
そんな中川代表は意外なことをきっかけにリアルビジネスへの関心を持った。「母が料理が得意でパン好きだったので、『60歳を超えたし、仕事を辞めてパン屋をやろうかな』と実家で食パンの販売を始めたんです。僕がマーケティングをサポートして、インスタグラムなどで集客したら、三重の田舎の店なんですが、すごい人が来てパンが売れたんです」と笑顔を見せた。
「店舗のフランチャイズ展開やマーケターの教育などのリアルビジネスを名古屋を拠点に手がけてみたいと思うようになった。どんなビジネスでもウェブマーケティングは必要ですが、東京に比べて、それを担える人材は少ない。その点で地域に貢献できると思う」と力を込める。
「自分はロジカルシンキング(論理的思考)が得意で、課題発見から解決までをロジカルに考え、結果を出していく」と自己分析をする中川代表。巨大サイトの一からグロースさせた経験を生かし、良いサービスや商品を持つ企業を支援して、地域経済の底上げにも貢献していく道筋が明確に見えているようだ。