株式会社サードテクノ代表である中田健太氏は、Webシステム開発、データ活用促進、システム運用代行、コンサルティングといった幅広い事業を展開している。新卒で入社したIT企業を約2年で退職し、独立に至った背景には、早期からエンジニアとしてプロジェクト全体を把握し、経営を学んだ経験があった。会社員時代からECを通じて多業種と関わる中で、IT業界に対する数々の疑問を解決すべく、法人化し本格的に活動を始めた彼の今と未来に迫る。
ECを皮切りにデータの世界を見つめ返す
●目の前にある課題を自らの手で解決
サードテクノは、特にWebシステム開発とデータ活用促進に注力している。その背景には、中田氏が「多くの企業のECで、せっかく集積したデータが活用されていない」と感じた経験がある。「頻繁にチェックされるのは売上、仕入額、在庫数くらいです。アクションの成功や失敗はデータから読み取れるはずですが、実際には実証されておらず、再現性も確立されていません。そこで、まずはECサイトとその周辺システムの開発に着手しました」。
同社は、必要な機能に絞ったシステム開発を行い、コスト削減が可能で、システムの柔軟な拡張も可能な点が特徴だ。さらに、その延長としてデータ活用の推進も行い、データ基盤(データを抽出、加工、分析するシステム)の構築まで手がけている。データ基盤は運用コストが高く、社会の大多数を占める中小企業には手が届きにくいため、低コストでデータ活用が可能になる独自の仕組みを作り出した。
「第一段階としてはWebシステム開発を行い、そのうえで『集積したデータを活用しませんか』と提案し、運用を強化して売上向上を実現させ、ECサイトを成長させていくイメージです」。
●4事業を連携させ、DX推進に貢献する
ECサイトを成長させるためには、コンサルティングが欠かせない。カゴに入れた商品が購入に至るかどうか、イベントやキャンペーン時の閲覧率や購買率の把握、それを基にしたアドバイスが必要だ。サードテクノは、企業に寄り添いながら、第三者の視点も取り入れて成長戦略を共に練るのが基本方針であるさらに、顧客企業の日常業務で見つけた「無駄」を改善する展開も視野に入れている。「今後は、これまで以上に積極的にコンサルティングを行い、顧客が納得できる提案を継続していくことが重要だと考えています」。
社会で「DX推進」が叫ばれて久しいが、実際に対応できているのは大手企業が多く、中小企業は紙資料のデータ化などにとどまっていると中田氏は感じている。本来のDXは、デジタル化した情報を活用し、事業の改善・向上を目指すものだと彼は語る。だからこそ、サードテクノは現状の課題を超え「次の一歩」を踏み出すきっかけを提供しい、DX推進を支援することを目指している。
●自社と社会に変革の波を起こす
ECにおいては、ゼロからのスタートよりも既存サイトのリニューアルが多く、業務はそこから発生することが一般的だ。リニューアルでは、サイトデザインや機能構築をより効果的に行うことが重要となる。「顧客の期待に応えるだけでなく、それ以上の成果を提供し、評価を得ていきたいと考えています。信頼関係が築ければ、企業サイトのリニューアルなど、より広範なプロジェクトにも関わることができるでしょう。ECサイトも企業サイトも、常に自社をアピールするために変化し続けることが求められます。私たちは、その変化を支える『力』でありたいと思います」。
さらに、中田氏は新しい雇用形態の創出にも着目している。データを扱う機会が多いなか、今後はデータ監視が主要業務の一つとなる可能性があるという。データが正しく運用されているか、欠損がないかをチェックし、場合によってはプログラムを組んで監視する役割だ。「この業務は頻度が高いものの、短時間で対応可能です。データ収集に問題が発生した場合の『お知らせ係』とも言えます。現役エンジニアで副業を希望する人も多く、その需要に応じた形で事業を展開できるのではと考えています」。
中田氏は現在、サードテクノという舞台の上で、自ら楽しめるシステムづくりを実践している。「こんなシステムがあれば有益ではないか」というアイデアを発信するだけでなく、設計そのものを楽しみ、まだ世にない画期的なサービスの展開にも意欲を燃やしている。日進月歩のIT業界では積極的なインプットが不可欠だが、それを「楽しむ」ことができるが中田氏の強みだ。好きなことを追求し、それを事業として昇華する。これは理想的な働き方の一つであり、これからの社会でも広まっていくと予測される。
さらに中田氏は、今後EC各業界で収集されるデータをまとめ、他社にも広く活用してもらいたいと考えている。「一人でできることは限られている」という強い意識があるからだ。だからこそ、顧客企業やエンジニア、さらにはその周辺の人々と結びつき、限りなく完璧に近いシステムを作り上げたいと語る。彼の目には、可能性を追い求め、それを実現させる強い意志が宿っていた。