[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

営業とエンジニアの溝を埋めてつなげあい、新たな価値を創造する

E-Mind株式会社
代表取締役
森下雄太
MORISHITA_YUTA

2021年11月に設立したE-Mindの社名には「良いマインド」と「Engineering」の「E」の二つの意味をかけている。もともとエンジニアである森下氏が起業した理由の一つには、高い技術を持つエンジニアたちを適正に評価し、その価値を底上げしたいという思いがあった。さらに、ビジネスの成功に欠かせない営業力をエンジニアの技術と結びつなげることで新たな価値を創造するために、営業担当の有村紀栄氏とともに代表取締役に就任した。事業に対する思いを森下雄太代表取締役に語ってもらった。

エンジニアと営業の長所をつなげるビジネスを

前職で15年勤めたSIerでは、製造業における電気設計・制御ソフトの開発・情報ソフトウェアの開発から企画立案まで幅広い業務に携わり、エンジニアとしての実力を現場で磨き上げてきた森下氏。入社当初、エンジニアばかり30名弱の会社は、10年ほどでグループ全体で社員数500名ほどまで事業規模が拡大した。森下氏も1年の半分以上を国内外に出張する日が続いた。

そんな中で森下氏が課題に感じていたのは、技術者と営業の間に生まれる深い溝だった。「受注のために顧客への提示金額を抑えたい営業と、抑えた金額では提供できるプロダクトに限界がありもどかしさを感じてしまうエンジニア。両者の溝を埋める必要がありました。」そこで森下氏は、両者の橋渡しとなるエンジニアリング本部という新部署を立ち上げた。エンジニアと営業がお互いの知見を生かしながらタッグを組めば、クライアントへのよりよいサービスの提供へつながると考えたのだ。

しかし、会社の規模が拡大するに伴い、意思決定の段階から社内統制を取るにも時間がかかり、新しい技術を提案したくてもなかなか進まない状況があった。

つなげることで新たな価値を創造する

「世の中の役に立つ素晴らしい技術をよりスピーディに提供したい」と独立を考え始めたころ、当時同じ会社で営業を担当していた有村氏と出会う。有村氏も営業としてエンジニアとどうタッグを組むかを悩んでいた。2人の出会いがE-Mindの出発点となった。

そして2021年、森下氏と有村氏は株式会社E-Mindを立ち上げる。「0から1を生む製品開発というよりは、世の中にあるものをつなげて新しい価値を創造することを目的としている」と森下氏は言う。日本各地の工場や技術者たちとのつながりを持つ同社は、クライアントからの依頼に対して、森下氏らが企画・提案を行い、部品調達や製品の組み立ては各地の工場に請け負ってもらう。

最近では、メガネ専門店「JINS」の受取ロッカー「S-PUL」を開発した事例がある。レンズ加工を伴う商品を購入し、商品受け取りに再来店したユーザーの待ち時間を解消するためのロッカーで、2023年中に日本各地で100台の導入を予定している。「JINS様からご相談いただき、企画・製造・ソフトウェア開発・設置までで1年ほどでした。このスピード感は我々だからできることだと自負しています」と森下氏は語る。

「技術は才能」。ひらめきやアイデアこそ求められる

森下氏が得意とするのは「新技術開発プロジェクト提案」と「エンターテインメント性を生み出す力」だ。今世の中にあるものではなく、数年後に実現可能な新技術やアイデアを実現することを目指す。さらには、エンターテインメント要素を盛り込むこともエンジニアたちの仕事のやりがいにつながると考える。「エンジニアたちがプロダクトを楽しみながら作り、自分の作るものに誇りを持ってほしい」という理由だ。

森下氏が考えるエンターテインメント性とは、バーチャル的な映像・音楽にロボティクスのリアルを組み合わせるイメージだ。「リアルな体験をプラスするほうが人の感動は大きいはず。たとえば、イベント会場などのキッチンカー。ロボットで全自動調理にして、映像や音楽で演出しながら食事を提供するアイデアをひそかに考えています」と目を輝かせる。

エンジニアは情報技術や開発の基礎や経験を積むことは必要だが、実はひらめきやアイデアが欠かせない。「技術は才能なんです」と森下氏は話す。ユニークなアイデアと高い技術を持つエンジニアが適正に評価され、その価値を底上げするための環境づくりを実現するべく、今日も挑戦をし続ける。

E-Mindは現在、2025年に完成予定の神戸アリーナ新設プロジェクトに参画している。製造業で培った情報収集の技術をマーケティングに応用するための技術支援を行う。防犯カメラを利用して人の流れをデータ化したり、利用者の位置情報などを解析したり、神戸アリーナを利用する人が楽しめる場所にするために考えているところだ。
さらに、今後の事業の一つに掲げるのは「デジタルツイン実装プロジェクト」。従来の製造の方法や工程にAIをリンクさせることにより、製造方法の最適解を示すことが可能になる。生産コストも、バーチャル上での試作が実現することで、これまでより早く価格設定を提供できる。

森下雄太

RECORD

E-Mind株式会社
代表取締役森下雄太
栃木県出身。専門学校を卒業後、不動産営業を1年ほど経験した後、システムインテグレーター会社へ入社。約15年間、製造業における電気設計・制御ソフトの開発・情報ソフトウェアの開発・企画立案などに技術者として従事。各部署を渡り、退職前はエンジニアリング本部長として部署を立ち上げる。入社当時は30名弱だったが、グループ全体で500名ほどまで規模を拡大。2021年11月、有村紀栄氏とともに代表取締役としてE-Mind株式会社を設立。