[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

信頼を一つ一つ積み上げ
空間づくりで未来に貢献する

株式会社トラストワン
代表取締役
雄太
MORI_YUTA

「価格競争ではなく、ほかと差別化できるサービスの提供でお客様に満足を提供していく」。競争が厳しい建設業界にあって、トラストワンの森雄太代表取締役はそうした思いを貫きながら、常に新たなチャレンジを続けている。

新規出店のニーズに対応

2007年の会社設立以来、店舗の内装工事と家具什器の製作を中心に事業を行い、受注・デザインから実際の工事までワンストップで展開。価格競争では長期的な持続性に欠けるため、他者とは一線を画す事業モデルを目指している。

その一つが、「ミセカタ」というサービス。「私たちは内装工事業を展開しているので、協力していただける不動産屋さんなどから、月に千数百件にもおよぶテナントの退店情報、解体工事情報をいち早く入手することができます。つまりそれは、新規出店が可能な空きテナント情報をいち早く入手することができるということです」。その利点を活かし、「新規出店したい」というニーズを持つ企業向けに空きテナント情報を提供。限られた期間の中でミセカタがコンペで施工価格を適正化し、実際の契約・施工まで寄り添っていくというのだ。そして森代表は、次のフェーズとして、不動産のマッチングの事業化も考えているという。

また、飲食店は全国で年間6万店舗ほどできているといわれるが、そのうち4万店舗は大手以外のオーナーや個人オーナーで、そこをターゲットにしている内装業者はほぼないという。このため森代表は「そこでは価格競争に陥らずに済むので、このターゲットに絞った事業展開も考えています」と意欲的だ。

空気清浄機付きテーブルに予想外の反応

コロナ禍をきっかけに、「スウトル」というネーミングの空気清浄機付きテーブルの提供も行っている。新型コロナの感染拡大で、飲食店など接客を伴う業態では、アクリル板やフィルムの設置が必須となった。しかし、それらが障壁となり、会話が聞きづらくなったり、心理的ストレスがかかったりする課題が生まれている。「そこで、家具を製作する自分たちが社会課題の解決に貢献できないかと試行錯誤し、空気清浄機付きテーブルを開発するに至りました」と森代表は紹介する。

市場に展開してみると、飲食店からの引き合いは想定できたが、予想外に医療機関からの問い合わせが非常に多いという。「実際に話を伺ってみると、医療機関ではアクリル板は根本的な感染予防策にはなかなかなっていないということで、受付などにも簡単に設置できるコンパクトな空気清浄機も開発し、引き合いをいただいています」とのこと。「スウトル」は地元の新聞社・福島民報社の「第7回ふくしま産業賞 特別賞」も受賞し、現在は、コンビニエンスストアのレジなど、多様な業種へ有効性を紹介している。

さらに森代表は、トラストワンの新たなサービスとして5つの事業が進行中だと話す。その中で注目されるのは、コロナ禍でDIYの市場が伸びていることから、プロの技術を持つ自分たちが一般の人もできる家具づくりのレシピ動画を配信するもの。「図面も材料もダウンロードでき、ホームセンターに持っていけばそのまま購入できるようにしています。今後は、自分で買いに行かなくても、休日前にホームセンターから材料が届くといったサービスも考えています」とアイデアが広がっている。

内装工事のユニット化に注力

また、ミセカタで関わっている不動産事業の新たな展開として、店舗に特化した不動産情報のポータルサイトを制作し、地場の不動産会社が抱えている表に出ていない情報を掲載し、ほかと差別化を図る計画を進めている。具体的には掲載費用は無料とし、契約は不動産会社が直接行い、仲介後の内装工事を同社に紹介した場合は不動産会社に紹介料を支払うとしている。森代表は「われわれのキャッシュポイントとしては内装工事があり、現在提携している先から出店に伴う紹介料が入る仕組みになっているので、ポータルサイトの運営は賄うことができます」と話す。

そして、もう一つ注目されるのが、内装工事のユニット化だ。現在、店舗の退店時、オーナーには解体か居抜きで後継店舗を探すしか選択肢がないが、トラストワンが退店時にユニット化した内装を買い取ることで、オーナーの負担を減らすことができる。買い取った内装は再販売も可能だし、チェーン店舗なら他へのリユースも可能だ。「ネックになっていたユニット化の素材も見つかりましたので、夏までには試作品を作り、年内には実店舗を作る計画です」ということで、工期を通常の3分の1に、初期予算を通常の3分の2に圧縮できる見込みだ。そのほか、デザイン家具のECサイトやデザイナーのマッチングサイトなども計画が進行中で、こちらも楽しみである。

今後に向け森代表は、社内的には若手社員でも活躍して十分な報酬が得られる環境を整備し、また若いうちから事業承継を見据えた人材育成を進めていく方針だ。事業においては、紹介した不動産事業や内装工事のユニット化などで他者との差別化を図り、「現在の事業と新規事業をすべてリンクさせ、物件を探す、業者を探す、工事をするといったお客様へのサービスのフローを一体化させて、さらに満足をお届けしたい」と熱く語る。

森雄太

RECORD

株式会社トラストワン
代表取締役森雄太
1979年生まれ。福島県出身。地元の専門学校を卒業後2000年に内装工事会社であるサンアクト東北へ入社。その後、27歳の時に同社が倒産。2007年、株式会社トラストワンを設立。代表取締役に就任。2020年から飲食店向けサービス「ミセカタ」を開始。さらなる事業拡大を目指す。