[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

「×IT」の力で未開の地を行くデジタルマーケティングの先駆者

株式会社吉和の森
代表取締役
和吉
MORI_KAZUYOSHI

黎明期からインターネットビジネスに携わってきた。現場で経験を重ねてきた。その自負が、森和吉氏にはある。森氏が設立した株式会社吉和の森は、デジタルマーケティングを中心にITコンサルティングやウェブメディアの制作・運営を行っている。クライアントには地方の商店や温泉旅館、高齢者が運営する士業紹介所など、インターネットやデジタルツールに不慣れな人も多い。しかし森氏は、「そういう方々がITを使いこなせば、ビジネスの仕方がガラッと変わる。活気が出て笑顔になるんです。そんな瞬間を作り出すお手伝いをするのが、私が会社を立ち上げた目的です」と話す。

意図せずデジタルの世界へ

インターネットビジネスに初めて携わったのは23年前。28歳で転職した音楽情報サービス運営会社でのことだった。その会社では音楽ランキングの週刊誌を発行しており、森氏はその雑誌のケータイコンテンツ化を担当した。「『インターネットって何?』と言われる時代。タレント事務所にアーティストの写真を提供してもらうだけでも一苦労でした」。その後、デジタルメディアは成長の一途をたどり、森氏は着メロ、着うたサイトの制作、運用を担当する。月額制でランキング上位の音楽をダウンロードできるこのサービスは大ヒット。月商は1億円を優に超えた。コンテンツのサブスク化は今でこそ当たり前だが、当時は始まったばかりの新規事業。こうして森氏は、意図せぬままデジタルビジネスの世界に足を踏み入れていた。

35歳で転職した広告代理店では、デジタルツールによる集客を初めて経験した。森氏は書店を巡り、ヒットしそうなネタを見つけては次々と公式コンテンツ化していった。ところがユーザー数は思うように伸びない。以前所属していた会社は大手ケータイキャリアと提携していたため、100万人のユーザーを簡単に集めることができた。しかし、新しい会社には集客のルートがない。「集客する術を考えては、手当たり次第に実践しました。例えばシニア向けのコンテンツなら病院にポスターを貼ったり、シニア向けケータイのメーカーと組んで広告を打ったり。ソーシャルゲームブームが始まった時は、自分でゲームをプロデュースしたこともあります。これが私にとって初めてのデジタルマーケティングでした」。

デジタルマーケティングは”漢方薬”

42歳で転職したシステム開発会社でも、さらにマーケティング経験を積んだ。この会社は流通・小売業、飲食業、製造業など複数の大手企業をクライアントとしていた。森氏はさまざまな業種のマーケティング担当者として、集客や新商品開発などを手がけた。「お得なサービスや商品を利用してもらうことは、一度だけなら難しくありません。大事なのはそこからファンになってもらい、二度三度と続けて利用してもらうこと。デジタルマーケティングの目的とは、そのための仕組みづくりなのだと考えるようになりました」。

50歳を前に、森氏はデジタルマーケティングを専業とする株式会社吉和の森を起業した。心がけているのは、わかりやすさ。「私自身、デジタルの世界に入ったばかりの頃は、カタカナやアルファベットだらけの業界用語についていけず苦労しました。私のクライアントの多くはデジタルに苦手意識があるから、そんな苦労をさせたくないんです」。今どき、商売をするには自社サイトは不可欠だ。しかし中小零細企業の中にはサイトを立ち上げただけで満足し、認知や集客につながっていないケースが多い。そこで森氏は、そのサイトを使って何をしたいかを丁寧にヒアリングし、目的に応じた情報発信の仕方を提案する。「デジタルマーケティングはカンフル剤ではありません。むしろコツコツ続けてじわじわと効果を上げる漢方薬のようなもの。そんな説明をするとみなさん納得して、SNSでの発信などを地道に続けてくれます」。

地方創生や第一次産業の活性化に貢献

IT活用によって、潜在的な力を発揮できる企業や分野はまだあるはずだ。森氏がそう信じるのは、45歳から3年間在籍した不動産投資会社での経験があるからだ。不動産業界は電話や個別訪問での営業活動が中心で、IT化があまり進んでいない。そこで森氏は培ってきたノウハウを使い、その頃ビジネスとして立ち上がったばかりの不動産投資のクラウドファンディングの運用とマーケティングを担当した。結果、1年間で8万人の会員と50億円の出資金を獲得。あらためてITのもつ潜在的な力に気づいた。「これは不動産×ITの成功例です。同じようにデジタル未到達の分野にITやデジタルマーケティングを持ち込んだら、一気に活性化するんじゃないか」。

現在、森氏が熱望しているのが、地方創生や第一次産業の活性化だ。背景には故郷、青森県八戸市への思いがある。「亡き父は漁師、母は農業をして私を育ててくれました。地域に根付き、自然とともに暮らす両親のような人たちとともに働き、元気になってもらうことが今の私の夢です」。デジタルビジネスの黎明期から蓄積してきた森氏の経験やノウハウは、この国をくまなく照らす希望の光になるかもしれない。

森和吉

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株式会社吉和の森
代表取締役森和吉
立正大学卒業。郵便局に勤務後、週刊誌編集に転職し、雑誌のデジタルコンテンツ化や着メロ・着うたなど新サービスの立ち上げ・運用を行う。不動産のデジタルマーケティング等を経て、不動産投資クラウドファンディングの立ち上げ・集客・運用に携わる。令和元年11月株式会社吉和の森を設立。ウェブ解析士マスター、チーフSNSマネージャー、提案型ウェブアナリスト。