2023年1月に創業したクレセンティア株式会社。戦略コンサルティング事業、開業コンサルティング事業、そしてM&Aアドバイザリー事業の3つを柱としている。代表取締役を務める水上大介氏は大学生時代において、薬剤師を目指すのと同時に情報工学を履修。学んだことを製薬会社と、戦略系コンサルティングファームにおける業務を通じてブラッシュアップし、現在の事業に生かしている。異色ともいえるキャリアを歩んでいる水上氏だからこそ描ける未来がそこにはあった。


優秀な人材の開業・経営を支え、日本経済の活性化へ


●自身の経験を生かし、理想をかなえるために創業
製薬会社時代、マーケティングにおけるデータ解析を担当していた水上氏。自身の行ったアウトプットがどのように活用されているかに興味を持ち、戦略系コンサルティングファームへの転職を果たす。実際に現場に立ったところ、自身のイメージとギャップがあることに気づかされることになる。クライアント企業の文化を考慮せずに、大手企業向けのフレームワークや成功事例を導入するのは、しばしば見られること。利益が出づらい企業は優先度を下げられる、そもそも高額な報酬を支払えないなどの理由から、コンサルティングを受けられないということもあった。
また、自身も資格を持っていることから、薬局業界・医療業界の事情には精通しており、開業を目指している薬剤師や医師のニーズも捉えていた。しかし、医療のスペシャリストだからといって、経営においてもそうであるとは言い難い。「魅力的な薬剤師や医師がたくさんいますが、彼らが開業するまでにはハードルがある。そこで私のキャリアのすべてを生かして、そういった方々を支えたいと思いました」と創業の経緯を語る。
●開業にまつわる手続きをワンストップかつ迅速に
現在特に力を入れているのが、開業コンサルティング事業だ。クライアントの事業は医療関連が多いが、飲食業や土木関連など多岐に渡る。医療関連に限っていえば、開業に使える資金の中央値は約800万円で、それよりも抑えたいというのがクライアントの実情だ。「当社は、予算の少ないクライアントに、大手にも負けない質のサービスを提供することができます。クライアントの現在ではなく、未来をつくりたいと思っています。そういった点で、当社は投資家的な側面が強い企業といえるでしょう」と語る。
同業他社の場合、税理士、司法書士、M&Aアドバイザリー、経営コンサルタント等のサービスは、それぞれ独立した組織が提供していることが多い。一方、クレセンティアはこれらの業務をワンストップで対応し、開業までの速度を上げ、機会損失を防いでいる。特に資金調達の支援は、クライアントの事業を理解した上で実行するため、早く、適切に支援できるのが強みだ。開業後、戦略におけるコンサルティングを提供することも可能。開業時より信頼関係を築いていることから、スムーズかつ有効性が高いサービス提供を行えるという利点があり、一過性ではない関係の構築を目指している。




●薬局業界の課題解決をし、地方創生を目指す
クレセンティアは社会貢献として、医療を通じた地域創生の実現を掲げている。黎明期に調剤薬局を開業した世代は高齢期に差し掛かっており、後継者不足という課題を抱えている。都市部で代替えの店舗はあるが、地方ではそうはいかず、医療過疎を招く恐れがある。それを防ぐために、同社では地方における調剤薬局の事業承継も積極的に支援。地域医療を支えることで、雇用先を維持しつつ、都市部への人口流出を防ぐことができると考える。医療サービスが安定することで地域住民の暮らしが充実すれば、新たな事業が生まれ、地域経済の活性化にもつながると期待している。
さらに、調剤薬局は後継者不足以外にも課題を抱えている。多くは個人事業者や小規模企業によって経営されており、売り上げに伸び悩んだり、苦労したりすることを予想して開業を避ける薬剤師もいる。そこで解決策として同社が提案するのが、調剤薬局のボランタリーチェーンだ。同社が中心となり、クライアント同士のネットワークを構築し、薬剤の購入を一元化。これによって大手に負けない購買力を実現し、薬価を抑えることが可能になり、地方の調剤薬局でも経営を維持できるという算段だ。
「私自身は何か特別な才能があるわけではありません。元々、私は陰で人を支えることが得意で、会社を起こした今も、他の企業にとってそのような存在でありたいと思っています。世の中には素晴らしい才能を持った人がたくさんいますので、そういった人々の能力が発揮されるような環境を構築することが私の仕事です」と、謙虚な姿勢を見せる。
そんな水上氏の率いるクレセンティアが掲げている理念は「クライアントの未来をエキサイトさせる」だ。水上氏は目の前の相手だけでなく、自治体、国、世界までをもクライアントとして捉えており、事業を通じてそれらの経済を活性化させられると考える。「今、日本の経済は停滞していて、明るい未来を描けません。しかし、私たちが医療の分野で地域の活性化を図れば、それは日本のためにもなるでしょう。そして、日本の優秀な人材が世界で活躍し、新しいサービスプロダクトを作ることで、世界をもっとエキサイトさせてほしい。まだまだこの国にも人にも伸びしろがあるということを、事業を通じて示していきたいですね」と意気込みを見せた。