[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

ITの力で人材不足の解消を

エクスツー合同会社
代表社員
嶺岸憲一
MINEGISHI _KENICHI

宮城県仙台市に事業所を置き、ITコンサルティングを中心としたサービスを提供しているエクスツー合同会社。嶺岸憲一代表社員は培ってきた技術を生かし、製品の開発、運用まで手掛けており、一気通貫で対応することも可能だ。顧客からの評判が新たな依頼を呼ぶことが多いと話すことから、仕事の丁寧さがうかがえるだろう。自身を「御用聞き」と言い表す同氏に、独立のきっかけ、社名に込められた思い、今後の展望を聞いた。

社会に貢献したいという思いから起業

嶺岸氏は、ゲームメーカーのプログラマーとしてキャリアをスタートさせた。ゲームのプログラムを組む場合、他のものとは異なり、表現力を高めつつ、いかにハードを効率よく制御するかという技術が問われた。また、仕様書通りにプログラムが出来上がったとしても、最終的にゲームの内容が面白くないと評価にはつながらない。そういった難しさに、当時はやりがいを感じていたという。「ゲームは空いた時間でプレイするものです。せっかく作るからには楽しんでもらいたいという気持ちから仕事に打ち込んでいました」という言葉からはサービス精神が見える。

仕事は充実していたが、年々「社会に寄与していない」と感じるようになっていた。そんな時、宮城県が発行している広報誌で、農業従事者、ドライバー、介護従事者が将来的に足りなくなることを知った。ちょうど、勤めていたゲーム会社の業績不振から、同氏が所属していた仙台営業所が閉鎖となったタイミングでもあった。それであれば独立をし、得意とするIT分野で人材不足が懸念される業界を支えたいという気持ちから起業を決意した。

クライアントの想像を超える仕事を

こうして2016年に創業したのがエクスツー合同会社だ。社名には嶺岸氏の仕事への姿勢が込められている。プログラマーとして会社勤めをしていた際、クライアントから製品に対して、やや漠然とした修正の依頼が入り、試行錯誤しながらも最善を尽くした。すると、「想像していたよりも遥かに良い仕上がり」と言ってもらうことができ、喜びを感じたという。それ以来、クライアントの依頼に2倍の結果で応えることを意識しており、社名として掲げることを決めた。

プログラマーとしてのキャリアは30年あっても、会社運営は初めてのことだった。「独立したものの、どうしていいかわからず、かなり大変でした」と語るが、創業から半年も経たないうちに転機が訪れる。仙台市が、ITによる介護事業者支援のための改善案を求めるコンペティションを実施。それに応募をしたところ、嶺岸氏の改善案が採用された。そのときのことを「現場に何度も足を運び、表面的な問題ではなく、根本の改善を提案できたことが評価につながった」と振り返る。その事業をきっかけに会社が周知されるようになり、少しずつ依頼が舞い込むようになる。

現場スタッフと同じ目線で話を聞くことを意識

現在は、当初狙いを定めていた就業人口が減るといわれている業界のみならず、飲食業界や製造業など幅広い業界で重宝されているという。そんな嶺岸氏の真骨頂といえるのが、丁寧な聞き取りだ。クライアントから依頼が入ると、まずは現場スタッフと雑談をすることから始まる。「コンサルタントというよりは、御用聞きですね。困っている人と同じ目線で聞く姿勢を心掛けていますし、そこにもっとも時間をかけます。すると、はじめは私に緊張感を抱いていた人も、足を運ぶうちに歓迎する雰囲気に変わりますね。打ち解けることができると、本音を引き出せるようになり、問題の根本を探ることができるのです」と言う。

彼の能力が発揮されたのが、繁忙期の波が激しい業界にある企業からの依頼だ。当初は勤怠管理システムの改善の依頼だったが、他の部署で使用されているシステムへの不満が各部署から上がり、最終的には関係したすべての部署を、横串で通すようなシステムにまで発展させた。結果、繁忙期のみの臨時採用がなくなっただけでなく、負担がかかる部署の残業をゼロにすることもできた。大幅な負担の削減に、経営層からも現場からも喜びの声が上がったという。

少子高齢化に伴い、日本における就業人口は今後ますます減ることが予想されている。嶺岸氏は、宮城県はIT化が進んでいないということを肌で感じており、エクスツーの事業を通じて改善できる余地は大きいといえるだろう。今後も引き続き、ITを用いた効率化で人員不足の解消に貢献したいと目標を口にする。「業務負担やストレスが減ると、その人の持つパフォーマンスがより発揮されやすくなります。システムは一度作ってさえしまえば、使う人が増える分だけ、効率化が進みます。そうやって私なりに社会に寄与したいという思いがあります」と笑顔を見せる。

そのためにはエクスツーとしても、人材の確保や事業を引き継いでくれる存在が必要だ。「創業当初から今まで、会社を大きくしたいという気持ちはあります。少人数ではできることが限られますが、50人くらいいれば、もっとさまざまなことができるようになるでしょう。その一人一人が能力を発揮し、近くにいる人をITの力で幸せにする。そうすれば、連鎖してより多くの人の幸福に寄与できるはずです」と語る。

嶺岸憲一

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エクスツー合同会社
代表社員嶺岸憲一
1967年生まれ、宮城県仙台市出身。仙台電波工業高等専門学校電子工学科卒業。データイースト株式会社、株式会社金子製作所(現株式会社カネコ)、株式会社パオン・ディーピーを渡り歩いたのち、2016年にエクスツー合同会社設立し、代表社員に就任。