[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

山口県でスケール化を図り、
働く人へより多くの選択肢を与えたい

株式会社Management Intelligence Service
代表
松村昌典
MATSUMURA_MASANORI

新型コロナウイルスの影響により、地方移住が進む予想もあったが、東京都は2022年に再び転入超過に傾いた。地方創生が叫ばれて久しいが、企業や産業の多くは、いまだ都市部に集中。地元で働きたくても、生活のために仕方なく都市部へ転入する人も多いだろう。そんな現状を事業で変えようとしているのが、山口県に本社を置く株式会社Management Intelligence Serviceだ。代表の松村昌典氏は優秀な人材の流出を防ぎ、地域のみならず、日本経済の活性化につなげることを目指している。

故郷の山口県に戻り就職、後に起業

松村氏は滋賀県内の大学で経済学を専攻。卒業後は、経営について実践的に学べることに魅力を感じ、山口県中小企業団体中央会に入職した。以来10年間、ものづくり補助金事務局において、事業の推進管理や地域事務委託元との調整業務にあたる。補助金の受給がブームになった当初から、約2000件を継続的に実行支援した実績があり「補助金の制度設計を熟知し、高い採択率を誇る点で、全国でも指折りの存在だと思います」と自信を見せる。在職中には中小企業診断士資格、応用情報技術者資格を取得。ITと経営に関する知見を深めていった。

「仕事を通じてわかったのは、補助金を受給するだけでは、成長できない企業がたくさんあるということです。そして、それらの企業に足りないものをITや経営に関する知見で補えることも多い」と語る。

そして、培った知識と経験をより多くの人のために役立てたいという思いと、チャレンジ精神から、2022年に立ち上げたのが株式会社Management Intelligence Serviceだ。同社は「IT×経営」をコンセプトに据え、経営コンサルティング、ITコンサルティング、補助金・助成金獲得サポート、中小企業の現場改善などを実施し、着実に評価を上げている。

Webマーケティング事業の獲得でさらなる弾みをつける

若い地方企業でありながら、補助金・助成金獲得サポート業務において全国に顧客を抱える同社だが、強みはそれだけではない。「確かに私よりもITスキルや経営手腕が優れている人はいるでしょう」と謙虚な姿勢を見せつつ、「しかし、山口県に根を張る企業に対しては、同じ地域に本社を構える方が関係を深めることができ、小さい企業であるゆえのフットワークの軽さも重宝されるのでしょう」と分析。そして、一度付き合いが始まれば、1つの案件だけでなく、複数の業務にわたって関わりを持つことや、他社の新規案件の紹介に結びつくことも少なくない。

一方で、顧客の紹介を経由しない新規案件の獲得には課題を抱えていた。その解決のため、2023年3月には、Webマーケティング事業のM&Aを成立させた。既存のコンサルティングに加え、SEO(検索エンジン最適化)対策、SNSの運用代行などWebマーケティング全般をフォローできる体制作りをすることで、新たな事業の柱の構築を目指す。この事業は新規顧客の獲得のためにはもちろんのこと、既存の顧客に対するサービス提供の幅を広げる部分でも有効だ。すでに既存顧客への提案を進めており、今年度中に売り上げが立つ見込みもあるという。

働く場所の選択肢を増やしたい

「山口県を代表する企業になる」という目標を掲げるようになったのは、経営者層の仲間たちとの会食で行われた会話がきっかけだった。子育てや子どもの将来が話題になった際、「今後は日本での就職を勧めない方向で教育をしたほうが良い」「アメリカ、インド、中国は日本と違って、能力のある人の可能性を潰さない」という論調になったという。「理解はできましたが、面白くないと思ってしまいました」とその時の心境を語る。そして、そのような論調に至る理由を考えたところ、「働く人の待遇面がグローバル基準に達していないから」という答えにたどり着いた。「学生の頃を思い返すと、優秀な同級生ほど、都市部で働くことを選ぶように感じていました。中には地方にある故郷に戻りたいという人もいたはずです。でも、選択肢として実質的に与えられていなかった。私としては何がなんでも山口県を選んでほしいというわけではありません。ただ、待遇面だけで山口県はおろか、日本までも選択肢から外れるということをなくしたい。当社が有望な選択肢の1つになれば、それをかなえられるでしょう」と力を込める。

松村氏は、働く場所と同時に、働きやすさも提供するために事業を拡大する予定であり、そのための手法がM&Aだ。「M&Aで取得した企業に私のコンサルティング能力が加えれば、スケール化を図れます。これによって、グループ化を果たす。こんなことを行っているのは山口県内にはいませんので、パイオニアになれるでしょう」と目を輝かせる。

グループ化し、企業を増やすメリットは2つある。1つは働く人の個性を生かせるということだ。1つの企業しかなければ、フィットできない人はあぶれてしまうが、たくさんの企業があれば、得意なことに集中できる職場が見つかりやすいという発想だ。もう1つは業務効率化であり、「命の無駄遣いをやめさせること」だ。「人間の時間は有限です。しかし、企業によってはいまだ無駄な業務がたくさんあります。グループ全体で無駄な作業を省くことを文化にすれば、働く人の人生をより充実させることが可能になるでしょう」と話す。この実現のために同氏が掲げている目標が、2038年までにグループとしての年商を1兆円にすることだ。これは山口県全体の総生産の約16%にあたる。無謀だと笑う人も多いというが、それを見据えるまなざしは真剣だ。

松村昌典

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株式会社Management Intelligence Service
代表松村昌典
2012年立命館大学経済学部卒業。卒業後は山口県に帰郷し、山口県中小企業団体中央会に入職。在職中に中小企業診断士資格、応用情報技術者資格を習得。2022年に「IT×経営」をコンセプトに株式会社ManagementIntelligence Serviceを創立。認定経営革新等支援機関、M&A支援機関、2023年IT導入補助金導入支援事業者。