「日本人が愛するラーメンを投資の対象とし、地域を潤す源流となって活性化にも貢献する」。そんな思いで「ラーメン店投資」をサポートしているラーメンプロデューサーがいる。一般社団法人国際ラーメン協会の藏本猛代表理事だ。


ラーメン店投資のノウハウを全国に広め地方創生推進への貢献も見据える


●多難な経験で培った経営ノウハウ
「日本人が愛するラーメンを投資の対象とし、地域を潤す源流となって活性化にも貢献する」。そんな思いで「ラーメン店投資」をサポートしているラーメンプロデューサーがいる。一般社団法人国際ラーメン協会の藏本猛代表理事だ。
ラーメン店投資とは、ラーメン店のオーナーとなり、売上から継続的に利益を得て事業を拡大していくこと。藏本代表はそうした開業を目指す人たちに対し、立地の選定からオリジナルの味づくり・店づくり、研修などに至るまで、ワンストップでサポートしている。これまで黒字に導いたラーメン店は400店を超え、フランチャイザーとして店舗数を拡大しているオーナーも少なくない。
藏本代表がそれをサポートができる背景には、これまで多難な道を歩みながら培ってきた唯一無二ともいえる経営ノウハウがある。27歳の時、岡山県でゴルフ場を経営していた父親が借入金や会員からの預託金、併せて200億円の負債を残して他界。東京から急遽駆けつけて開いた会員総会で、罵声を浴び預託金の返済を迫られた藏本代表は、「自分がゴルフ場をきちんと運営し、会員の皆さんの待遇を落とすことはしない」と宣言して社長に就任。銀行や債権者の対応、裁判、資金繰りなどに奔走し、壮絶な日々を乗り越えながら10年かけて負債をゼロにし退任した。
その後、ラーメン店に着目してスープや麺の研究に打ち込んだ藏本代表は、ゴルフ場時代からつながりのある食品メーカーの協力を得てスープと麺を製品化しラーメン店を開業。試行錯誤を重ねて経営のノウハウを蓄積し繁盛店に育て、直営店を15店舗まで拡大した。
しかし、そのまま拡大路線を続けないのが藏本代表の真骨頂ともいえる。全15店舗をそれぞれの従業員に無償で譲渡して、フリーの立場になってしまったのである。そんな藏本代表を他のラーメン店の店主らは放っておかなかった。自分の店を見てほしいという声が次々と寄せられ、「実際に店を見て、気になるところをアドバイスすると、売り上げが伸びたり、グルメサイトで1位を取ったりと、確実に成果があがるようになりました」という。
●ラーメン店を無償でプロデュース
こうして、2014年から本格的にラーメンプロデューサーとしての活動を開始した藏本代表。「さまざまなラーメン店で実感したのは、店の宣伝やスタッフの教育も含め、当たり前と思えることが多くの店でできていないことでした。それを修正してあげるだけで、売り上げが違ってくるのです」。藏本代表はそうしたコンサルティングを、ラーメン店に対しては無償で続けたのである。
やがて、藏本代表の名前を全国区にする出来事が起こる。多くのラーメン店を繁盛店にしていることが出版社の耳に入り、本の出版依頼を受けたのだ。最初は断っていた藏本代表だが、何度も頼まれるうちに「1冊くらいなら」ということで承諾。単なるノウハウ本ではなく、ラーメン店経営を投資として捉えて執筆し、『誰も知らなかった ラーメン店投資家になって成功する方法』のタイトルで2019年に出版したのである。
反響は大きく全国から問い合わせが殺到し、メールだけでも月に500通も来るようになった。こうしたこともあり、この年にラーメン店投資家を支援する一般社団法人国際ラーメン協会を設立。折しも2020年にコロナ禍が始まり、多くの問い合わせの中から、開店資金をしっかり用意し、本当にやりたいという人だけが残ることになったのである。
藏本代表の国際ラーメン協会では、プロデュース店に対しラーメン店投資家になるためのノウハウや情報、インフラを提供するパートナー制度を展開している。それが、一般的な全国展開のフランチャイズチェーンと大きく異なるのは、すでにあるブランドのコピー店を運営するのではないということだ。ブランド(店名)もスープの味もメニューも店舗のデザインも、オーナーがすべて自由に決めることができ、さらに、加盟金やロイヤリティも不要となっている。


●「立地」と「スタッフ力」、そして「味」
そんな藏本代表がラーメン店投資における成功要因としているのが、「立地」と「スタッフ力」、そして「ラーメンの味」である。なかでも重視しているのが立地とスタッフ力で、「特に立地に関しては、たとえいい場所であっても、売り上げに対し家賃の比率が10%を超えると収益をあげるのが難しくなります。そこを見極めることで、われわれは400店以上を黒字に導くプロデュースができているのです」と話す。その中には、青森県八戸市の漁港近くで周囲に何もない場所を立地に選んだこともあり、関係者は皆驚いたが、見事に繁盛店にした事例などもある。また、スタッフ力についても、藏本代表は店長やオーナーにしっかりノウハウを提供し、開業後も力を発揮できるようサポートしている。
今後について聞くと、「現在行っているラーメン店投資のノウハウを、日本はもちろん海外にも広げていきたい」と話す藏本代表。それにより、「ラーメン店投資家を目指す人々を支援するだけでなく、地元の食材を使ったラーメンが各地で生まれ、地域を潤す源流となっていくことに貢献したい」と熱く語る。その目は自身のノウハウを次世代につなげていくことも見据えている。
藏本代表は、ラーメンは日本人が大好きな食べ物であり、それを活用することで地域活性化への取り組みに貢献できる可能性があると話す。そのために自らできることとして、「スープや麺のメーカーとも協力し合いながら、地域の特産を生かした新しいラーメンづくりにも挑戦したい」と意欲的だ。折しも、政界では石破茂衆議院議員らにより、ご当地ラーメンの振興や地方創生につなげようという「ラーメン文化振興議員連盟」も設立されており、ラーメンに対する注目はさらに高まっている。