[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

喜ばれることを喜びに
人を育て、さらなる飛躍を目指す

株式会社ナニワ電装
代表取締役
北中一男
Kitanaka_Kazuo

「仕事があるから人を入れるのではなく、人がいるから仕事を取れるのです」。そう明言するナニワ電装の北中一男代表取締役は、その言葉通り、これまでぶれることなく従業員の人材育成と福利厚生に力を注いできた。

従業員の定着率向上で会社を立て直し

サラリーマンだった北中代表が、父の経営するナニワ電装に入社したのは30歳のとき。折からの好景気で、クルマの電装品を扱う仕事は順調で生活も安定したが、間もなくバブルが崩壊。それからは、終業後にアルバイトをするなど、長く辛酸をなめることになった。

2005年10月、北中代表は会社の法人化を決意し代表取締役に就任。「そのときはプレッシャーしかなかったです」と言いながら、自分のことよりも約20人いた従業員とその家族の生活を守らなければという強い思いのもと、独学で経営を学び会社の立て直しに着手した。

中でも重要と考えたのが、従業員に長く働き続けてもらうことだった。「例えば、ある仕事をする従業員が去年と今年で全く異なっていたら、同じ品質は保てません。また、技術のレベルアップや継承もままなりません」。そのため、自分がフォローできるところは極力フォローし、待遇面でも他社に決して負けないレベルを用意し、徐々に定着率を高めていった。

長く働くようになれば「やりがい」にも直結する。「最初は何もできなかった従業員が、新しいカーナビゲーションの箱の前に立って梱包を解き、幾重にも束ねられた配線を一本一本正確に分けてつないでいく。車体にセットしたナビ本体の電源を入れ、鮮やかな色の画面が現れ正常に起動するのを見たときは、それは感動するものです。その達成感とやりがい、そして経験と知識を積み重ねていけば、今度は何か不具合が出たときも、大体の原因を予想して対応できるようになっていきます」。そうなれば指導する立場にもなれる。ただし、そうなっていくには時間が必要で、「入社して1年間コツコツやっても、ようやく土俵に片足のせようかといった感じです」と、北中代表はこの仕事の奥深さを話す。

従業員と会社の成長のため『社長業に専念』

従業員と会社を成長させるため、北中代表は自らの働き方も変えてきた。その大きな決断の一つが「社長業に専念する」というものだ。現在、国産自動車メーカーでは、電装品などの取り付けを店舗で行わなくなってきており、「品質の統一やコスト削減などのため、センター架装と言って、取り付けを1カ所でまとめて行うようになってきています。当社も少人数から始めて、従事する人数を増やしてきました」。実は、北中代表自身も以前はこうした現場の作業を行っていたが、「従業員を抱えて会社を大きくしていこうと思ったら、自分が現場で働いていてはだめだと気づいたのです」と振り返る。

実際、自分も作業しているときと、現場を離れて外から見たときでは、仕事や会社の見え方が明らかに変わったという。「従業員はこういうことに困っているから、こう直していかねばならないと、客観的に見えるようになってきました。野球で言えば、個々に必死で取り組んでいる選手と、チーム全体を考えなければならない監督とでは、見ているところが異なるのと一緒です」。

さらに、従業員に、より自主性を持ってもらい、会社としてもしっかりした組織となるよう体制も整備してきた。「個々がバラバラに私に意見を持ってくるのではなく、各部門のリーダーが部内の声を吸い上げ、リーダー会という場で話し合い、自分たちで解決できるものは解決してもらいます。その上で、これは会社に相談しようということになったら、私のところに持ってきてもらい一緒に最善の策を考えます」。一見、ドライに思える従業員への態度だが、その裏には、「成長を促しながら、会社にできることは、極力希望に添えるようにする」という意図がある。そうした思いは従業員の家族にも向けられ、国内外への社員旅行に加え、従業員の家族も招待する年末のホテルパーティーなど、福利厚生の充実にも積極的に取り組んできた。

人とのつながりが新たな可能性に

社外で新たな人脈を増やし、結果として会社にプラスに働くよう、北中代表はゴルフの練習などにも力を入れ、さまざまな人と出会える機会を増やしている。「例えば、クルマに関連した業界の方とゴルフをしながら、自分のところではカーナビなどを取り付ける『納整』で困っているという話が出れば、私たちが一緒にその解決をお手伝いして、将来的に喜んでいただける可能性があるわけです」。そこには、困った人の力になりたいという北中代表の変わらぬ思いが根底にある。

従業員を育て、会社を育て、人とのつながりを育んできたナニワ電装の北中代表。設立時に約20人だった従業員も、現在は6倍の約120人にまで増え、熟練の従業員から若い従業員へと技術の継承も行われている。

今後へのビジョンを伺うと、「自分一人の力には限りがありますが、皆さんに喜んでいただきたいという私の思いを、ここまで育ってきた従業員に受け継いでもらい、ナニワ電装をさらに大きくしていってほしいと思います。そして、ゆくゆくはフランチャイズという形で、従業員が新しいステップに挑戦してくれたらうれしいですね」と笑顔が返ってきた。

北中一男

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株式会社ナニワ電装
代表取締役北中一男
1964年大阪府生まれ。大阪府立布施工業高等学校電気科を卒業後、会社員を経て30歳の時に父親が経営するナニワ電装に入社。2005年10月会社を法人化した後、引退した父に代わって代表取締役に就任。独学にて経営を学び、今もなお会社を成長させ続けている。