企業や大学向けにチーム構築や女性や若手の育成など研修プログラムを提供するGivin' Back。木下直美代表は、自身の経験を基に、さまざまな価値観を持った個の力を生かす独自の研修プログラムを開発した。木下代表の考えるダイバーシティー(多様性)を強みにする組織づくりとは……。


ダイバーシティーを強みに新時代の組織づくりプログラム


●自分の“市場価値”を上げる
「個人の強みやアイデンティティーを生かした世の中にしたい」と語る木下代表が、その思いを持ったのは、自身のさまざまな経験が基になっている。台湾・高雄出身の木下代表は、自分自身含め異文化を理解されずに苦労する母や親族の姿を見て、「自分の市場価値を上げないといけない」と思ったという。
不動産業界に入った木下代表は入社早々から優秀な営業成績を上げていたが、「女性だから向いてない」と顧客や業者などから決めつけられることが多く、個を尊重しないトップダウンのマネジメントだったため、仕事にはやりがいを持ちながら、「仕事の環境に限界を感じた」と転職。そこで会社に個人を生かそうとする文化やビジョンを持ち、上司もそれを理解していたといい、「環境で人は変わる」と実感した。
しかし、自身がマネジメントをする立場に回ると、成果主義に陥り、トップダウンのマネジメントを行ってしまった。「その時出会った上司が“お母さん”のような人で個々を許容してくれた。その姿を目の当たりにして初めて気づいた」と反省。「チームメンバーが力になってくれて、何でも相談できるような関係性になり、組織が循環して、最終的に全員が自立できた。自分の中で『これがチームの定義だな』と思った」と現在に至るヒントをつかむ。
●自身の成功体験をフレームワークに
「個⼈プレーで売れるようになっても意味がない。チームワークで成果を出せるようにするために、どういうプログラムを提供すればいいのか」と向き合い、チームの立て直しに成功した木下代表は、現場から企業指導の担当に変わる。そこで管理職が自分と同じように悩んでいることに気づいた。「それは昔の私と同じ、そうなっちゃダメって言って、いわば“しくじり”を共有しました」とマネジメントや組織構築の指導に生かした。
さまざまな企業の指導を通じて、多くの企業の課題感が共通していることを知る。「大小関係なくどの企業も『社員の主体性がない』『チームがまとまらない』『ビジョンが浸透しない』と悩んでいた」。そこで、自身の成功体験を再現性の高いフレームワークに落とし込み、手順を踏んでいけば誰でもできるように研修のプログラムを構築していった。
「企業の経営層の反応も良かったんですが、研修を受けた若手や中堅層の人たちがその場で『とても良かった。また来年もやってほしい』と言ってくれた。人の役に立ちたいって思いでやってきたので、その時『私って役に立てるんだ』と感じた」という木下代表は2022年2月に兼業の形で、会社を立ち上げた。だが「ダブルワークはそれぞれ120%のパワーを出さないといけなかったので限界でした。転職時から『起業する』と言っていたので、みんな温かく送り出してくれました」と円満退社で独立を果たした。




●「フィードフォワード」の志向を
Givin' Backでは、個々の強みや能⼒を⽣かしたチーム⼒強化、さまざまな企業で求められる⼥性リーダー育成、そして学⽣や新社会⼈など次世代に向けた⾃⼰発⾒ワークの三つの柱で研修プログラムを提供している。
最初は管理職に向けてチーム⼒強化のプログラムを提供する予定だった。「全員がリーダーシップを持つ『ワンピース』のような組織をつくるには、管理職や⼀般社員のあらゆる階層に提供することが、有効であることが新たな発⾒でした。関係性強化から組織の⼀体感が⽣まれ、喜んで頂けたことで気づくことができました」と話す。さらに⼥性リーダー育成については、「外資系企業などでは、⼥性幹部がいないと資⾦調達ができないこともあり、育成が⼤きな課題になっている」と指摘する。
さらに「⼥性だけでなく、さまざまな価値観を許容することもダイバーシティーだと思う」と指摘。「⾃分と違う意⾒や価値観を許容できない⽂化がまだまだ残っており、⽇本社会はまだまだ旧態依然の組織形態で、組織が硬直化しています。多様な価値観から学ぶことが組織の成⻑に繋がると考えているので、チームの結束⼒強化を⽬的とした『フィードフォワード(未来視点での改善)』の志向をプログラムで取り⼊れています」と語る。
⽊下代表はこのプログラムを常にブラッシュアップし続けているという。「⾃分がやってきたことを⾔語化して、⾃分⾃⾝を変えたプログラムなので、常にそこを軸にして、⽴ち返っています。よく『⾃分がこのプログラムの⼀番ファンです』と話すんです」と⾃信の笑みを⾒せる。
Givin' Backの社名の由来でもある「恩返し、恩送り」という理念のもと、これまで頂いた恩を返し続ける中で、次世代に恩を送り、人々が他者のために貢献し続けていく社会を作るべく、奮闘される木下代表。若者の育成はもちろん、自身のプログラムをDX化し、自身のルーツであるアジア圏にもフィールドを広げていきたいという。さらに、2022年7月にイギリスのウェールズで開催された、オープンイノベーションに関する国際学会で、フレームワークについての実績の発表を行うなど、その活動は多方面に広がっている。それが、とりもなおさず人々が他者のために貢献し続ける、企業の成⻑と人々の幸せに繋がっていくのだろう。