[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

重篤な病の前触れ研究が進む ED 治療を啓蒙

イースト駅前クリニック新橋院
院長
加藤
KATO_JUN

一世を風靡したバイアグラが承認されたのは1999年である。我が国で ED(勃起不全)の薬物治療が始まって四半世紀が過ぎようとしている。日本での ED 有病者数は、2002年の数値で中程度が約870万人、重度が約260万人で、合わせて約1,130万人と推定されている。婚期の上昇に伴い、日本の妊娠率は低下している。ED はこれに付随する問題に他ならない。一般に男性のプライベートな悩みと受け取られがちだが、夫婦間の問題でもあり、人口減少に関連した社会課題とも捉えられる。だがそれだけではない。

ED は動脈硬化の前兆

「ED症状は、心筋梗塞や脳梗塞など循環器疾患の前触れといわれています」。加藤院長は厳かに語った。ある研究グループが ED 発症者を追跡調査したところ、心筋梗塞になる割合が突出していたという。ED の原因はさまざまだが、中高年の多くは加齢による動脈硬化が関係している場合が多い。不摂生が高じて高血圧、糖尿、高脂血症、肥満、高尿酸血症などの生活習慣病を発症し、これが ED の原因となるのだ。実際、当院の患者のうち1/4が高血圧持ちだという。

「男性器の中には、『陰茎深動脈』という大変細い血管が走っています。性的刺激があると、この血管の内膜が開いて海綿体に血液が流れ込み勃起します。血管が柔らかいと勃起しやすいのですが、硬くなると ED 症状になるのです」。つまり ED とは、局所的な血管の硬化状態である。中年期に差し掛かると、先週までなんともなかったのに突然 ED 状態になることがある。それは動脈硬化の現れでもある。当院の来院者の約30%が20~30代の若年層であり、未成年が父親と相談に来た例もあるという。若年層の場合は交感神経の高ぶりによるものか、心因性の場合が多い。

患者自身に話してもらう

当院の来院者は1日平均120〜130人ほど。オフィス街が近いこともあり夕方からの来院が多い。駅から3分と好立地だが、地下にあるクリニックまで専用階段でアクセスできるため、人目に付きにくい。オンラインでの診療も受け付けており、来院者への配慮に腐心していることがうかがえる。加藤院長が問診で心掛けていることは、「できるだけ相手から話してもらうようにすること」。「繊細な部位です。勃起しないことでコンプレックスをお持ちの方が多いので、『大変でしたね』と受け止めてあげるようにしています。『こういうことですか?』と口にすると患者が萎縮してしまうことがあるため、こちらから細かく確認はしません。相手から話してもらうように配慮しています」

治療の基本となるのは内服薬の服用である。原因が血管の硬化でも、心因性の場合でも、シアリス、レビトラ、バイアグラの3剤、もしくはジェネリック医薬品の中から処方薬を選んでいく。一番人気は効果が1日半持続するシアリス。次いで即効性が高いレビトラ。最近は舌に載せるだけで唾液に溶けるフィルムタイプの薬も売れている。ED 薬の薬理作用は血管拡張性だけで、興奮作用は全くない。必要以上に服用すると血圧低下や心不全になる恐れもあるが、使用量さえ間違えなければ動脈硬化の予防も期待できる。24時間以上間隔を空けていれば、連日摂取しても心配ないという。

わずか5回の通院で治癒する波動照射機器

ED 薬は高い効果が期待できる薬剤だが、狭心症でニトログリセリン系の薬を服用している、もしくは6か月以内に脳卒中や心筋梗塞になった病歴の持ち主には禁忌である。また、ニコチンが血管を締めてしまうため喫煙者には効き目が薄い。こうした患者に加藤院長が推奨しているのが「リニア衝撃波」と呼ばれる波動を照射する治療法である。イスラエル製の「モアノヴァ」という機械による施術には痛みがなく、1回あたり15分程度。機器を局所に押し当てじっと待つだけの気軽さだ。施術中にスマホを眺めていることも可能で、個室なので人目も気にならない。概ね5回程度で治療が完了する。薬のような副作用の心配がないこともあり、「EDを根本から治療したい」という患者から特に支持されているそうだ。

「モアノヴァは弱い衝撃波を1,800発照射することで、陰茎深動脈を新たに産生させます。ペニスの血管に働きかけることで血流を増加させるのです」と加藤院長。全年齢を対象にしたモアノヴァによる施術成功率は80%を超えているが、40代、50代に限ればほぼ100パーセントの被験者が効果を実感しているという。また手動式の吸引装置を使った治療器具もあり、安価な治療を希望する患者に提供されている。

現在は ED と AGA に悩む男性たちに応える加藤院長だが、元は防衛医大出身の外科医である。阪神淡路大震災のときには、滅菌した毛髪で負傷者の傷口の縫合手術を行うなど、修羅場も経験した。豪州で一般開業医として6年半ほど過ごし、その後は神戸にある外資系製薬メーカーにメディカルドクター(医師として製薬会社に勤める会社員)として勤務。日本製薬医学会の認定医の資格を取り、創薬の世界に身を置いた。その後定年を経てこの業界に足を踏み入れたという。現在も産業医やメディカルアドバイザーとして数社と付き合いがあるそうで、そうした広い知見に基づいて男性たちと向き合っている。「最近はリモートワークにより運動不足の方が増えました。運動不足は肥満をまねき動脈硬化を進行させます。すなわち ED の原因にもなるのです」と加藤院長。「ED は罹患期間が長いと治療効果が現れづらくなる病気です。悩んだらまずご相談ください。オンライン診療によるご自宅での診察にも対応しています」

加藤淳

RECORD

イースト駅前クリニック新橋院
院長加藤淳
1956年生まれ。北海道出身。1982年防衛医科大学校卒業、同年防衛医大附属病院、共済組合三宿病院に勤務。1984年海宝胃腸科外科病院に、1986年札幌いしやま直腸肛門科病院に移籍。1991年幅広く医療に携わろうと渡豪し、メルボルンの Epworth Hospital に勤務。阪神淡路大震災の半年前に帰国し、尼崎で被災。1997年日本イーライリリーに入社し企業医師となる。2017年12月イースト駅前クリニック新橋院院長就任。