生命保険セールスは、親戚と友人知人に売ったらそれで終わり。3ヵ月で売る相手がいなくなり、ほとんどが離職してしまう。「人が使い捨てられているような状況を変えたい」。その思いで、マーケティング理論に基づいた「楽しく長く売り続ける」方法を、セミナーや教材を通じて伝授しているのが、株式会社三洞だ。埼玉県に拠点を置く同社の代表は、書家や飲食店店主などの顔も持つ五十田三洞氏。「生命保険セールスは、正しい方法でやれば、時間・お金・場所の自由が手に入れられる仕事」と言う五十田氏に、事業を立ち上げた経緯や生命保険セールスに対する思い、今後の計画を聞いた。


マーケティングの力で生命保険セールスを変える


●ストレスなく成果をあげる方法をセミナーで伝授
生命保険セールスは、開業後3年以内に90%以上が廃業してしまう。その原因は「マーケティングを教えられないまま、やみくもに頑張らされるだけだから」と五十田氏は喝破する。
「『たくさんの人に会え』『苦しんでこそ、結果が出る』と言われて、人に嫌われ、ストレスに耐えながら長時間働く。でも成果が上がらずに辞めていくのです。生命保険販売も普通のビジネス。マーケティングなしに売れるはずがありません」
五十田氏のセミナーでは、マーケティングプランナーと生命保険セールスの経験に基づいた、ストレスなく短時間で成果が上がる方法を教えている。具体的には、適切な情報発信により相手の方から「話が聞きたい」と言って来てくれるやり方。会って話すのは「保険料をこれだけ減らせます」という数字だという。
「生命保険は便利な金融商品です。必要な人が必要な時期に必要なだけ買えばいい。その期間が終わった時に『無事でよかったね』と言える、相手にとって得になるものしか売りません」
2023年現在、セミナー受講生は延べ800名以上に及び、全員が「仕事に必要な時間が3分の1以下になった」と喜んでいるそうだ。
●「週3日しか働かない」と決め、300週連続で契約を取る
元広告代理店のマーケティングプランナーという、生命保険セールスパーソンとしては異色の経歴を持つ五十田氏。34歳で転職した理由は、生命保険会社からヘッドハンティングを受け、完全歩合制なら週2回出社するだけでいいと言われたこと。当時から取り組んでいた「書」に使う時間が十分に取れるようになると考えたからだ。
「週3日しか働かない」と決め、独立までの間、300週連続の契約を達成。マーケティングやコピーライティング、プレゼンテーションのスキルを生かし、独自のメソッドを確立した結果である。独立前から、セミナー会社からの依頼で、マーケティングやプレゼンテーションのセミナーを開催していた。受講生から「トータルのセミナーをやってほしい」という要望をもらったことがきっかけとなり、現在のセミナーの原型を立ち上げる。
2001年にファイナンシャルプランナー、個人生命保険代理店として独立。五十田氏自身の成功体験に裏付けられたセミナーには、生命保険セールスの先輩も受講しに来てくれたという。現在は、生命保険セールスのセミナーや教材販売に加え、書家、飲食店店主など、バラエティーに富んだ8つの仕事を楽しんでいる。




●世の中のストレスを減らし、幸せの量を増やしたい
生命保険セールスは、正しい方法でやれば、時間・お金・場所の自由が手に入れられる仕事。そう考える五十田氏は「正しい方法を教えず、セールスパーソンを使い捨てる。今の業界の在り方は間違っている」と語気を強めた。
「一人でも多くの生命保険セールスパーソンに、一刻も早く『正しい世界』に来てほしい」という願いをかなえるため、セミナーの全国展開を企画中だ。受講生の中で、講師ができる力をつけたメンバーに、各地でセミナーを開催してもらい、自身はセミナー後の個別指導の方に集中したいという。著述にも力を入れており、既に「生命保険の正しい見直し方: 〜本当のプロが教える方法〜」をはじめ、11冊の書籍を発刊。「今期は6冊出したい」と意気込みを見せる。
2021年3月には「多くの保険セールスパーソンのよりどころになれば」と考え、一般社団法人「正しい保険の見直し方会」を立ち上げた。受講生の中の希望者がメンバーとなり、同会の認定講師として「正しい保険の見直し方」セミナーを展開中である。
五十田氏の理念は「世の中のストレスを減らし、幸せの量を増やす」。手掛けている事業は全て、誰かのストレスを減らすための仕事だと笑顔を見せる。
取材の中で五十田氏は、一人の受講生のことを話した。幼い4人の子どもを連れて離婚し、働きながら子育てをするために、五十田氏の門を叩いたという女性だ。セミナー受講後、子どもたちと過ごす時間を十分に取りながら、順調に売り上げを伸ばしているという。どのようにしてそれを可能にしたのかという問いに、五十田氏はこう答えた。
「売り方や伝え方は人それぞれ。相手にもよります。セミナーでは、自分と相手に適した方法を考えるための基礎を教えています。ロールプレイングなどはやりません。受講生には、自分の過去と現在を書いて振り返ってもらいます。売るものは自分の中にしかありませんから。振り返りの結果、彼女は子どもが4人いる家庭専門の生命保険セールスになりました。子どもがたくさんいる人が、独身の若いセールスパーソンよりも、こういう人の話を聞きたいと思うのは当然ですよね」
他の受講生からも「子どもと一緒にいられる時間が圧倒的に増えました。先生のお陰です」と言われるのがうれしいと、顔をほころばせた。五十田氏が伝える「ストレスを減らし、幸せの量を増やす」方法は、生命保険セールス以外にも役立ちそうだ。