[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

学習塾の一風変わったフランチャイズ化を展開

株式会社BeyondPlace
代表取締役
池畠
IKEHATA_YU

神奈川県川崎市を拠点に、小学生から高校生までを対象に学習塾を展開している株式会社BeyondPlace。集団指導と個別指導を組み合わせた、業界でも珍しいシステムを導入し、時間対効果を重視した指導に力を入れている。現在、7教室を展開しており、業界初となる方法でのフランチャイズ化で、さらなる教室拡大を目指す。画期的な試みを多数実施している池畠悠代表取締役に創立のきっかけ、業界の課題、運営のために使用しているツール、今後の展開について聞いた。

特技を生かせる塾業界に飛び込む

学生時代は野球に打ち込んでいた池畠氏。それでありながら、少し勉強をすれば、すぐに頭に入り、学業での苦労はあまりなかったという。大学時代には3年間、大手学習塾で講師を経験。熱血教師というわけではなかったが、わかりやすさが塾生とその両親から評価されたという。これらの経験から、自分が効率よく勉強すること、そしてそれを教えることが得意であることに気付き、学習塾業界に就職することを決意した。就職後、企業支援を事業とする株式会社インテンスプロジェクトの古川真一氏に出会い、同社の役員として、社内起業という形でみやうち塾を開校するに至った。

集団指導であれば講師一人あたりが見る塾生の数が増え、売り上げを増やすことができる一方、授業について来られない塾生へのフォローが難しくなる。個別指導であれば、塾生へのフォローはしやすいが、費用対効果は下がり、通塾側としても高額な授業料は負担になるはずだ。その問題の解消のために同塾では、集団指導と個別指導の両方を採用。学習段階に応じて指導方法を切り替えることで、運営側、通塾側の双方にメリットをもたらすことを可能にした。

責任感から想定外のタイミングで起業することに

画期的な手法ではあったが、集団・個別指導の切り替えのオペレーションは、想像していた以上に難しいことを実感することになる。そこで専用のアプリ「BeyondPlace」を開発、導入。これにより、学習段階に応じて変わる教室情報の共有、生徒の進捗の教材単位での管理、講師の労務管理が可能に。順調に見えた池畠氏の塾経営だが、インテンスプロジェクトの方針転換により、他地域での出店・人員増員の要請を受けた。しかし、現状の立地で勝負したかったのと、小数精鋭での運営を実現したかった。この点で議論になり、インテンスの一役員としてでは現状維持ができない状況になった。

「退社して、一から学習塾を作るという選択肢もありました。しかし、塾生やそのご両親への責任を感じていたため、投げ出すことはできず、みやうち塾を買い取ることを決意。独立をしたいとは思っていましたが、正直なところ想定外でしたね。これもまた運命でしょう」と当時を振り返る。

こうして2019年に株式会社BeyondPlaceを創業。新型コロナウイルス禍に直面したが、他の学習塾とは異なり、教室は開け続けた。集団・個別指導の切り替えと、そのための教室の切り替えというシステムは、三密を避けるためにも役立つことになる。そのせいもあってか、創業当初は100人程度であった塾生が、2倍になったという。

投資対象としてのフランチャイズは業界初の試み

今、池畠氏が最も力を入れているのが、フランチャイズ化だ。直営の場合、教室数が増えすぎると、その教室の状況に合わせての改善が難しくなるというのが問題だ。一方、フランチャイズであれば、決済権を持っている人と、現場の権限を持っている人が基本的に同じであり、早期改善も可能になる。また、独立をしやすいというのもメリットだ。「やる気と能力があれば、雇われて働くよりも、収入を得やすくなります。当社と独立したオーナーが切磋琢磨しあい、みやうち塾を広めるのが理想です。独立のためには協力を惜しみませんし、成長のために当社を踏み台にしてもらっても構いません」と語る。

独立支援を目的としたフランチャイズは珍しくないが、投資対象としてのフランチャイズは学習塾業界では初の試みだ。この手法では、投資家から資金を募り教室を設立。運営を行うのは、あくまでもBeyondPlaceで、投資家はそこで生まれた利益の一部を得ることができる。学習塾業界市場は一兆円規模といわれ、リターンも大いに見込めるだろう。「若者の学習機会の投資にもつながるため、社会貢献としての側面もあります。この点も魅力ではないでしょうか」と力を込めた。

池畠氏が時間対効果を重視した指導をするには理由がある。「例えば中学生時代は、その時でしか体験したり、感じたりできないことがたくさんある貴重な時間です。ですから、勉強に時間を費やしすぎるのはもったいない。それに授業についていけないのが苦痛で、学校生活が楽しめないのも辛いですよね」という言葉には、塾生への思いが読み取れる。

学習塾は学力を伸ばすことが目的だが、意外にも彼は塾生に対して高学歴や偏差値の高い大学への進学は期待していないという。「なぜ勉強をするのかというと、社会で生きていくために必要だからです。なかでも特に重要なのは、日本語力を身に付けること。どの教科でもまず、日本語を理解することが求められますから」と語る。その考えから作られたのが、日本語の作文に特化した教室だ。まだ開いて間もないが、塾生やその両親の反応と日本語力の向上に、手ごたえを感じているという。「具体的な教室の数や、大きな売り上げは、目標として掲げていません。それよりも、目の前の塾生にしっかり還元することが大切です。そして、彼らが将来活躍してくれることで、間接的に社会貢献ができればいいと考えています」と頬を緩めた。

池畠悠

RECORD

株式会社BeyondPlace
代表取締役池畠悠
1994年生まれ、広島県出身。2017年4月に慶応義塾大学経済学部経済学科卒業後、株式会社リソー教育に入社。2017年7月に株式会社インテンスプロジェクトの役員に就任し、みやうち塾を立ち上げる。2019年にみやうち塾・こだなか塾の事業譲渡を受け、株式会社BeyondPlaceを創業。