新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内に緊急事態宣言が出された2020年4月に創業した「Flink」。仕事がなくなり、国の支援も受けられず役員と共に“ホームレス生活”というどん底からスタートした飯嶋琢己代表取締役は、人と人とのつながりで危機を乗り越え、社員の夢の実現に取り組んでいる。「社員一人一人が主役になる」をモットーにする飯嶋代表に思いを聞いた。


ホームレス生活からの大逆転社員を“主役”に夢を実現


●緊急事態宣言翌日の起業
高校まで野球に打ち込んでいた飯嶋代表は、卒業後、専門学校で公務員を目指した。「親から公務員になることを勧められていたので、どうせなら体を使う職業がいいなと考え消防士を目指した」というが、思い通りにいかず、知人の紹介で営業会社に就いた。
「独立を勧めるような社風で、スポーツイベントを企画したりする面白い人がいっぱいいたので、自分でもイベントを開いたりして、自然と独立を考えるようになった」と起業家精神を育んでいった。営業職で成績を上げ、自信を付けた飯嶋代表。「正社員は安定してるのですが、営業を通して自分の売り上げを実際に見ることで、お金を自身で管理したいという思いが強くなった。また、両親に恩返ししたいという気持ちも大きかった」と独立を決意する。
フリーで営業を経験した後、知人2人と会社を立ち上げた。「2020年4月に創業したんですが、コロナで緊急事態宣言が出された翌日でした」と振り返る。「一気に仕事がなくなり、貯金も底を尽きてしまったため『逆にいい経験になるんじゃないか』と役員で話し合い、ホームレス生活を送ることにしました」と明かす。
●人とのつながりで逆境乗り越え
コロナ禍での事業継続の支援制度は前年度の売り上げがある事業者が対象となるため、コロナと同時に起業した飯嶋代表は利用できなかった。役員3人で公園で寝起きし、自動販売機の下に落ちている小銭を探したりもした。「キャリーケースを持って常に仕事を探し、人に会うときだけ知り合いにシャワーを借りていました」と苦笑する。
そんな逆境の中でも飯嶋代表はさまざまな人と会うことを続けた。その中で、「3カ月ほど無収入という状態でしたが、様々な人と関わる中で、通信業界や家電量販店で営業スタッフを必要としているという話を聞いたため、その分野での人材派遣をスタートしました」と話す。
2020年7月から業務委託を受けて、約3カ月間飯嶋代表はじめ役員も現場に出て、必死で働いた。少しずつ仕事が増えていったが、今度は人手不足が課題となった。「最初は本当に知り合いだけが頼りでした。学生時代の友達や主催したイベントで知り合った人たちなど、LINEに1500人ほどの友達がいたため、1日100人単位で連絡していって、知り合いの知り合いとかを紹介してもらっていました。」という苦労をしながら、人のつながりを頼って、何とか事業を軌道に乗せていった。




●「自分は後回し」で社員の夢を支援
会社の目標を「社員一人一人が主役になる」にしている飯嶋代表が次に手がけたのは、社員の夢の実現だった。「実は当初から役員報酬を社員の給料よりも低く設定して、経営の安定に務めていました。」といい、会社のキャッシュに余裕ができてから、新規事業に着手しようとした。
飯嶋代表は、エステサロンを経営する夢を持っている女性社員に白羽の矢を立てた。「入社するときに全員の夢を聞いているんですが、彼女はそれまで仕事をものすごく頑張っていて、具体的な事業計画も持っていたので、役員で話し合って決めました」と、開業資金はもちろん、飯嶋代表の知人のサロン経営者にスタッフの研修をお願いするなど、開業を全面支援した。
そして2022年10月、バストアップとフェイシャルエステを専門とする「バストサロンAlii」をオープンした。飯嶋代表は「ハワイの花の『オハイアリイ』の花言葉が『自分らしく生きる』『輝く個性』だったので、『女性が自分らしく輝けるサロンにしたい』という思いで名付けました」と命名の理由を笑顔で語る。
飯嶋代表は「スポーツジムなどの店舗経営をやりたいという社員が他にもいるので、このサロンの経営は必ず次に生かせるはず」と自信を見せる。
「これまでの人生の分岐点では必ず誰かに支えられ、そのおかげで今の会社があります。そのため、『人との関わり』を大切にして、『感謝』の気持ちを常に持つようにしています」と力を込める。コロナ禍の起業でホームレス生活という危機を、多くの人のつながりで乗り越えてきた飯嶋代表は、その思いを胸に多くの人たちの夢の実現に力を尽くしていくだろう。