[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

日本の良さを知る海外留学で世界と戦うグローバル人材を育成

株式会社ジージー
代表取締役
平田利行
Hirata_Toshiyuki

少子化が進む日本にとって、国際競争を勝ち抜くために、グローバル人材の育成は喫緊の課題だ。その貴重な機会となる留学先として、今や上位を占める韓国やフィリピンといった新興国への展開を、いち早く進めてきたのが、株式会社ジージーの平田利行代表取締役だ。

異文化交流の魅力を知り、留学支援事業を開始

平田代表の転機となったのは、休暇を利用して訪れた韓国での体験だ。韓国人との交流サイトを通じて案内人を募り交流。もともと海外への関心が強かったわけではないという平田代表だが、「言葉で苦労しながらも異文化に触れるなかで、徐々に視野が広がる感覚に魅了されました」という。その経験をビジネスに活かすことができないかと、アメリカやイギリスといった英語圏への留学が一般的だった2006年に、韓国への留学をサポートする事業をスタートさせたのである。

しかし売り上げは立ったものの、手元に残るのは自分ひとりの生活費でぎりぎり。次なる一手として、目を付けたのがフィリピン留学だった。フィリピンには当時日本人留学生は数えるほどしかいなかったが、事業をスタートすると瞬く間に数億円を売り上げるほどに需要があった。「しかし拡大したマーケットには、競合他社の参入が相次ぎました。そこで留学エージェントの事業に加え、自社の語学学校の開校に踏み切りました」という平田代表。2011年ごろに語学学校を開校すると、日本人に適したきめ細やかなサポートが好評を博し、その後も売り上げは右肩上がりに増加。加えて旅行代理店とパートナーシップを締結して、教育研修旅行商品も販売し始めるなど、次々に新規事業を打ち出していった。

コロナ禍を乗り越え、パン販売で世界進出へ

順調だった同社の歩みだが、2019年に状況が一変する。新型コロナウイルス感染症の流行だ。新たに欧米への留学エージェント事業に着手し始めた矢先のことで、すぐに留学生を日本に帰国させ、留学費用を返金。従業員に対して、「会社を畳むことになるかもしれない」と告げるほど、事態は切迫していた。会社をやめるか、休業するか、ほかの事業を始めるか──。考え抜いた末に平田代表が下した判断が、オンラインでできる語学学習商品の販売だ。返金対応により運転資金がわずかとなる中、残りの資金をすべてシステム構築に投入し、約2カ月で販売開始に漕ぎつけた。「大きな損失を出している旅行代理店にも、売上確保の一手としてオンラインの商品には需要があり、連携して販売することができました」(平田代表)。売上はコロナ禍前から9割減少したものの、何とか従業員の給料を賄うことができたのである。これを足掛かりに、自治体が提供するオンライン英会話サービスの運営にも関わるようになった。現在同社のオンライン語学学習の受講者は、約5万人に達している。

韓国とフィリピンへの留学支援、語学学校の開校、オンライン語学学習商品の販売と、常に新規事業の開拓に邁進してきた同社。コロナ禍から脱却し、いま新たなフェーズとして展開しているのがパンの販売事業だ。海外の日本食レストランが増加するなか、ラーメン、寿司などに比べて認知度の低い日本の総菜パンだが、コンビニエンスストアの総菜パンに対する訪日外国人からの人気の高さに商機を見出した。「和風のパン屋であることが一目でわかるようにのれんを掲げるなど、店舗設計にもこだわりました」。本格的な展開に向け、まず大阪府心斎橋に店舗を構えると、予想通り訪日外国人が殺到。海外進出の道筋が見えたことから、第一歩として今年10月にまずはアメリカで販売を予定している。

“日本の良さ”を原動力に、挑戦を続けていく

実はこのパンの販売事業には日本食の認知拡大に加えて、外国人スタッフのキャリアチェンジ支援という側面もある。「弊社には、外国籍のスタッフが非常に多く、帰国を考えるスタッフに対し母国でパン屋を運営するという選択肢を作ってあげることで、安心感を与えたいと考えました」。

これまでの留学事業とはビジネスの性質は全く異なるものの、どちらも根幹にあるのは「日本のすばらしさをもっと知ってほしい」という平田代表の思いだ。留学事業で日本の発展をけん引する人材を育成するとともに、パン販売事業で海外における日本のブランド力の向上を目指している。

2006年の開業以来、さまざまな事業を打ち出してきた同社。売上高10億円を超えた今、パンの販売事業の本格始動もあり、経営も大きな転換点にある。「これまでは私が経営のかじ取りを行っていましたが、多様化する事業のそれぞれをけん引するリーダーを育成する必要があると考えています」。これまでの体制にメスを入れる作業はそう簡単ではなく、フラストレーションも大きいというが、その表情はやる気に満ちている。「日本経済は低迷しているといわれていますが、海外を訪れると日本のサービスや商品に対する海外からの信頼はいつの時代も高いです。日本は、まだまだ世界で存在感を高められるポテンシャルがあります」。海外を舞台にビジネスを展開してきたからこそわかる日本の良さが、平田代表を動かす原動力だ。

新興国が急激な経済成長を遂げ、先進国と競合するなか、国境を超えて活躍できるスキルを備えたグローバル人材の育成は、日本の社会への大きな貢献につながる。平田氏は留学事業を通じて、世界を相手に戦うことのできる未来のリーダーを生み出している。また「日本にとって『食』が経済回復のカギを握る」として、パン事業にも期待が寄せられている。

平田利行

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株式会社ジージー
代表取締役平田利行
1977年大阪府生まれ。大学卒業後、大手飲食チェーンに就職。ベンチャーの飲食会社に転じ、新規出店等のマネジメントに携わる。会社員時代に旅行で訪れた韓国で、留学エージェントの仕事と出会い、独立。株式会社ジージーを設立し、代表取締役に就任。フィリピンへの英語留学サポートを中心に業績を伸ばす。2012年、セブ島に直営の語学学校「IDEA CEBU」「IDEA ACADEMIA」を設立、教育事業にも力を入れる。コロナ禍を乗り越え、現在新事業となる、通販事業をスタート。2024年大阪心斎橋にベーカリー「ぱんどら屋」をオープン。2026年にはペットフード「MOGUMOGU」ブランドを世界にリリース予定。