家族を養うため、若い頃から寝る間もなく、“トリプルワーク”の生活も送ってきたというR8ENERGYの林憂也代表取締役会長。友人にだまされ、多額の負債を背負いながら、信頼を勝ち取り、整体から空間プロデュースを手がける“逆転人生”で、常識にとらわれない生き方を発信している。


整体から空間プロデュースへ 常識外の“逆転人生”


●トリプルワーク”からの出会い
林代表は、母と13歳下の妹を養うため、居酒屋と引っ越し、飲食店などのバイトを掛け持ちして、必死に働いた。「睡眠時間が1日3時間で、これはまずいなと思った時に母の紹介で、市の委託でリサイクル回収業の仕事が見つかった」と語る。
正社員になった林代表だが、ここで家族のために家を購入。一人でローンを返済するため、昼間の回収の仕事だけでは足りず、夜はコンビニエンスストア、朝は牛乳配達という“トリプルワーク”を余儀なくされた。
そんなとき、地元の千葉県市原市で話題になったカフェと出会う。「すごく分かりにくい場所で、看板も出さずに営業していたのですが、古民家をリノベーションして、SNSを活用したマーケティングで誘導して、メニューやスタッフのオペレーションなど戦略的で衝撃を受けました」と語る。
このカフェで学びたいと決意した林代表は、経営者に“弟子入り”する。日中は板金の仕事で、神奈川の工場に行き、その後カフェで働くという生活を送った。「本当に朝から晩まで一緒で、常に移動中とかに、経済ニュースなどからテーマを拾って、その記事についてどんな考察をするか、ディスカッションをさせられました。寝る時間もなく働いて、さらに頭を使って、本も読まされました。一番自分が鍛えられた気がします」と述懐する。
その後、元スーパーの倉庫を改装して新たなカフェの立ち上げに関わり、一定の成果を収めたが、ITの知識が足りないことを感じて、東京都内で不動産関連事業を手がけていた幼なじみの友人の下でITを学ぶことになった。だが、ここで大きな落とし穴が待っていた。
●“落とし穴”からの再起
新しい会社では、アフィリエイトで、ウェブ記事を作って、検索が向上するかという仕組みを学んだ。「パソコンを持ってないところから始めて、一日中3〜4時間パソコンに向き合っていました。ただ、給料が5万円だったので、日雇いのアルバイトバイトに登録して、ヘルメットと安全靴は机の下に置いて働きました」とまたもや厳しい生活を送る。
次第に要領をつかんで、数カ月でアフィリエイトで収益を上げるところまでになり、周囲からも一目置かれるようになったという。そこで、友人から金融事業に誘われる。「保育園の時からの知り合いだったので、信用して投資を集めたんですが、そこが“落とし穴”でした……」といい、数千万円単位の負債の責任を取らされる羽目に陥る。
「普通みんな逃げると思いますが、とりあえず全員対面で会って話すことにしました。しんどかったんですが、状況を説明して、納得してもらうしかなかった。そこを認められたとこあると思う」と債権者と向き合っていった。
そんな中、大阪の債権者に説明することになり、「知り得る情報を誠意をもって相手に伝えることしかないので、それで押していった。その人が『まだ目が死んでへんな』みたいな感じで、再起のためのお金を出してくれることになった。こんなドラマみたいなことあるんだなって思いました」と大逆転の一歩を踏み出すことになった。




●“空間を整える”事業に
仲間の支えもあって、偶然購入していた施術器具を使った整体を開業した林代表は、格闘技の経験があったため、アスリート向けに施術を広げていった。「人はイメージに影響されるので、今考えるとうまくいったと思う」と語り、総合格闘技の有力選手などを担当することで、ブランディングに成功。わずか2年で黒字化を果たした。
「整体は“空間を整えている”んです。人間の体をミクロに追及していけば、細胞と空間から成り立っています。細胞の空間に違和感を感じたところを整える。その際に、その部屋の空間(場)も整える必要もあるので、心地よさやリラックスを提供できる空間を自分のセンスを反映させて提供しています」と解説する。
軌道に乗った整体事業をいとこに譲って、新たに“空間”のプロデュースに力を入れることになる。「これまでの経験で、自分が一番得意だと思ったのはカフェの経験でした。クライアントがこういうものを作りたいと言われたら、そこに自分のセンスも加味したものを表現できる」。
現在、山梨県の山中湖近くのカフェや、東京都内の公園の再生、商店街の空き店舗のプロデュースに取り組んでいる。「実績を積んでいって、プロデュースした空間にカフェや施術のスペースを作って、地域の集客につなげていきたい」と思いを語った。
「施術は直接人に触れる仕事なので、信頼関係がないとコミュニケーションが取れない。信頼がはぐくまれると、人に認められて、新たな出会いにつながっていく」という林代表。壮絶な人生を送ってきたが、「常識にとらわれない、固定概念や先入観にとらわれない生き方を示すことで、少しでも誰かの救いになれたら」と発信を続けている。