[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

芽吹いてない小さな価値を拾い上げ、愛されるアイデアへ

株式会社focit
代表取締役
大介
HAYASHI_DAISUKE

2023年1月に創業し、経営コンサルタントを事業としている株式会社focit。ファシリテーションの「f」、コンセプトの「c」、テクノロジーの「t」、そしてゼロイチ(oi)と、「focus」の複数形である「foci」を組み合わせた社名の由来の通り、新しい価値を生み出すためのサポートやDXサポートを強みとしている。エンジニアからコンサルタントという大胆なキャリアチェンジを図った林大介代表取締役に、コンサルタントを目指した理由、独立したきっかけ、自身の強み、日本企業への思いについて聞いた。

自身の成長のため、コンサルタントに転向

大学で工学を学んだ後、エンジニアとしてキャリアを歩み始めた林氏。いわく、「やんちゃな社員」であり、さまざまな会議に顔を出しては、周囲の目を気にすることなく主張をし続けていた。しかし、歯に衣着せぬ物言いがマイナスに作用し、周囲の社員が彼の顔色をうかがいながら仕事をするようになっていることに気づいた。「自分は井の中の蛙なのではないかと考えるようになっていました。このままでは扱いづらい人間になってしまうという危機感もありましたね」と語る。しかし、研修でビジネススクールに通い始めたことで、大きな転機を迎える。その研修には他の企業からも多くの社員が参加していた。優秀な人材を目の当たりにし、世の中の広さを知ったという。「変わらなければいけないという気持ちが芽生えた」と話す通り、ビジネススクール以外に、プライベートでさまざまなセミナーに参加するようになった。そういったセミナーで出会う優秀な人たちの多くはコンサルタントであり、「キャリアを歩む上で、一度通らなければいけない」と感じ、コンサルタントに転職したのが31歳のときだった。

コンサルタントになって初めて気づいた得意分野

キャリアチェンジに迷いはなく、「前に進む楽しみしかなかった」と笑顔で話したものの、慣れない業務に苦戦を強いられたのは無理もないだろう。それでも、ある企業のR&D研究会をサポートした際、ファシリテーターとしての力量を発揮。「このときに初めて自分がファシリテーターに向いていると実感しました。実はエンジニアを辞めるとき、『ファシリテーションスキルを駆使して頑張ってください』と激励を受けていたのですが、そのときはあまり意識していなかったのですね」と笑う。林氏は自身を「器用貧乏タイプ」と評するが、すべてをバランスよくできるからこそ、さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる場所を仕切ることができるのだという。「自分は何をやっても中途半端だと思っていましたが、だからこそできる領域なのですよね」と頬を緩める。

ファシリテーターとしてゼロイチを作ることが得意であるということに気づいたが、それは大きなコンサルティングファームでは評価されづらい仕事だった。「大きな組織にいると、ゼロイチに携わる仕事がやりにくいということに気づきました。それであれば、身軽になって困っている人を助けたいと思ったのです」と話す。

共振によってアイデアを広げる

そんな彼が経営をする上で意識しているのが共振だ。他のコンサルタントであれば見逃してしまうようなクライアントの何気ない一言を拾い上げ、それを刺激するような質問をする。すると振幅が大きくなっていき、アイデアとして広がりを見せるという。「外部の私がアイデアを押し付けても、本当の意味では刺さりません。しかし、クライアント自身が外部から刺激を受け、殻を破って生み出したアイデアはずっと愛され続けます。ですから、ちょっとした『価値』を掘り出し、みんなで一緒に本当に価値のあるものに引き上げていくという状態を作ることが大切です」と主張する。

DXも彼の得意分野だ。あるエンターテインメント業界からの依頼で、DX化推進をサポートすることになったものの、依頼が漠然としていたことやIT化と混同されたことから、コンセプトを決めきれずにいた。そこで、DXという言葉を大胆に捨て、EX(Employee Experience)に変更。「エンターテインメント業界だから、まずは従業員が仕事を楽しむ必要があります。内部での創造性を高めることが、彼らにとってのトランスフォーメーションであると説きました。この単語を引き出すまでに苦労しましたが、すんなり受け入れられました。これからEXを元にどう発展させていくかが楽しみですね」と目を輝かせた。

現在、林氏が切望しているのは、暗中模索を続けている新たな会社との出会いだ。企業の規模が大きければ大きいほど、人材が多く、高い潜在能力を秘めている。一方で、そういった企業はしがらみも多いことから、いいアイデアが芽吹かなかったり、芽吹いても咲ききれなかったりということもあるだろう。

「日本人の創造性は他国から評価されるほど高いにもかかわらず、自己評価が非常に低いというのは、よく知られた話です。日本人が独創的であるということを、私との仕事を通じて気づいて欲しいと思っています」と熱を込める。そして「私はおせっかいな性格です。その企業でしか実現できないということはたくさんあって、消費者を代表するつもりで、期待を込めて応援したいのですね」と笑う。彼は、そうした自身の行動が企業に眠っているものを掘り起こし、育て、社会にいい変化をもたらすと信じて行動している。「私のことを『この人、本当に必要?』と疑う人もいるはずです。ですが、発掘した小さな価値が育ったときに、『林さんと一緒にやったワークショップが始まりだった』と思い出してくれたらうれしいですね」と笑みを浮かべた。

林大介

RECORD

株式会社focit
代表取締役林大介
1978年生まれ、北海道出身。北海道大学工学部卒業後、沖電気工業株式会社に入社。ネットワンシステムズ株式会社に転職した後、デロイトトーマツコンサルティング株式会社、シスコシステムズ合同会社、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社、株式会社ウフルを経て独立。2023年に株式会社focitを設立。