[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

リスケ・第二会社事業再生で、1社でも多くの企業を救う

株式会社リバース
代表取締役会長
長谷川博郁
HASEGAWA_HIROFUMI

1980年の会社設立後、総合外食企業にまで育て上げたのち、メインバンクの裏切りによりあわや倒産寸前に陥った経験を持つ長谷川氏。そんな長谷川氏に救いの手を差し伸べたコンサルタントとの出会いを機に、自身も第二会社事業再生のコンサルタントとして独立。現在までに44社を支援してきたのが、同氏が代表を務める株式会社リバースだ。

融資をする金融機関は、真の意味で顧客の立場に立つよりも、どうしても資金の回収が先にきてしまう部分がある。その結果、会社の立て直しが難しくなっているのが実情だ。そうした構造に対し、同氏が提案するリスケ、第二会社事業再生とは。「1社でも多くの企業を助けたい」という長谷川氏の思いを聞いた。

処方箋と外科手術を使い分け、企業を救う

事業を続けていくなかで困難に直面した際、どのようにして会社を守れば良いのだろうか。その手段として「リスケジュール(以下、リスケ)」と「第二会社事業再生」を提案し、企業を支援しているのが長谷川氏が代表を務めるリバースだ。

リスケとは、銀行と保証協会の支援をもとに、その会社に合った無理のない返済スケジュールプランを作成し、返済負担を楽にすることで会社の立て直しに力を入れられるようにするもの。他方、第二会社事業再生とは、返済を完全にストップし、その企業が行っている事業のうち強い事業を新しく設立する別会社に移してリスタートを切ることで、事業を再生する手法。新会社には元の会社が背負っている負債がないため、借り入れもでき、利益を得られる状態にまで成長させやすいという。

両者の違いについて、長谷川氏は次のように説明する。「治療に例えるならば、リスケは処方箋で少しずつ治す方法を指します。対して、第二会社事業再生は外科手術。悪いところを一気に取ってしまい、良くしていくイメージです」

メインバンクの「裏切り」により陥った倒産寸前の状況。立て直しを図れたのは「第二会社事業再生」との出会いだった

日本でまだ外食産業が全国に普及する前の1980年代より、長谷川氏は、KFCやモスバーガーといった外食事業を手掛けてきたというバックグラウンドを持つ。今まで、イギリスでの狂牛病、鳥インフルエンザの流行といった外食産業にダメージを与えた出来事も経験してきたが、赤字には陥らず、借り入れをすることなく乗り切ってきたという。また、外食産業をメイン事業とする会社の他、別会社の経営も行ってきた。

しかしあるとき、メインバンクにいわば「だまされる」形で、倒産の危機に直面することとなる。利益の出ている事業売却を迫られ続ける提案に、「このまま銀行員の話を聞いていたら会社を潰されるのでは」と思った長谷川氏。そんなときに出会ったのが、第二会社事業再生のコンサルタントだった。

「そのコンサルタントから『長谷川さん、それは銀行にだまされていると思うよ』と言われたことで、疑念が確信に変わりました。それまで、メインバンクがだましにかかってくるとは思ってもみなかったですよね」既の所で、第二会社事業再生により事業を再生。その経験から「自分も他の企業を救いたい」という思いが膨らみ、立ち上げたのがリバースだ。

企業の状況に応じて、適切な立て直し方法を提案。立て直しを図る企業を全力で支援する

長らく第二会社事業再生で中小企業を支援してきた長谷川氏。リスケも昔からある手段であり、存在自体は把握していたものの、あまり良い手段ではないと思い、取り入れてこなかったのだという。しかし、今は「リスケも使い分けることが重要」だと語る。

「契機はコロナ禍です。多くの中小企業が危機に瀕するなか、政府が金融機関に『経営サイドに立って融資しなさい』と指示をしました。リスケを適用できる期間も伸び、10~15年という長期にわたって活用できるようになった。それだけの期間があれば、会社を立て直すことができる。企業の状況に応じて、リスケと第二会社事業再生を使い分けて提案しています」

伸ばせば利益を出していける強い事業がある会社は、第二会社事業再生が適していると長谷川氏は話す。しかし、どの会社も単体で強い事業を持っているわけではない。そんな会社が生き残る手段として、リスケがあると語る。「外食店の経営者仲間から声を掛けられ、第二会社事業再生で店名や商品構成を変えた外食店舗を新たに立ち上げ、運営することで立て直したことがあります。苦しいときにも、全力で物事に当たっていれば道は開けていくもの。そのお手伝いができたらと思っています」

「会社を立て直したい、事業を守りたい経営者にも、企業に融資している金融会社にも、リスケや第二会社事業再生という方法を正しく知ってもらいたい」と長谷川氏は語る。

「金融会社は、どうしても『回収』が先に立ちます。そういう意味では、本当の意味で顧客である企業の立場に立てているとはいえないでしょう。よく聞くのは、銀行に駆け込んでリスケを依頼しても、立ててもらった返済計画がギリギリで、結局会社を立て直す余力がないというケースです。ただ、厳しい計画を出す銀行側にも、『返済額を下げすぎて余力が生まれたら、そのお金を投資ではなく浪費に使われてしまうのでは』という懸念があるんですね。要は、過去にそうしたことをした経営者がいたことで、経営者を信用していない部分があるんです」だからこそ、両者の間に立つことで、企業にも銀行にも利をもたらしたいという。

「長い時間をかけて軽い負担で返済を続け、余裕が生まれて得られたお金は事業資金として使えるようにする。我々が経営者を見守りますよと伝えることで、銀行には安心してもらえるでしょう。一方、経営者側も知識をつけ、銀行と対等に話せるようになってほしい。その手伝いをしたいのです」

長谷川博郁

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株式会社リバース
代表取締役会長長谷川博郁
1952年青森県八戸市出身。東洋大学文学部を卒業後、東京の機械商社に勤務。西ドイツ(当時)で1年の養豚研修を受けたのち、米国で7ヵ月ブロイラー研修。帰国後、父が創業した第一ブロイラー株式会社は、1980年に第一フードサービス株式会社を設立、外食産業に進出。取締役部長としてKFC(ケンタッキーフライドチキン)の物件開発、店舗運営を担当。常務取締役としてKFC15店舗、モスバーガー5店舗を運営。1992年、第一ブロイラー株式会社売却に伴い、第一フードサービス株式会社を買い取り、総合外食企業(60店舗、60億円規模)に育てる。2007年、メイン銀行の裏切りにより倒産寸前にまで追い込まれたところ、第二会社事業再生のコンサルタントと出会い、残った事業10店舗を第二会社に移し、運営。3年ほど恩師のかばん持ちをしたのち、第二会社事業再生コンサルタントとして独立。現在まで44社のバックアップに携わる。