[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

健康についての知識を伝え、「最善の健康」を実現する

一般社団法人メディカルライフ
理事長
土師時成
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会社で健康診断は受けているが、もらった結果に対して特に対処はしていない。本格的に調子が悪くなるまでは受診しなくていい―。多忙な日々を送る人のなかには、こうした健康意識を持っている人も少なくないだろう。しかし、こうした姿勢が回復までの期間を長くし、ひいては医師の激務や医療費の増大を引き起こしている要因となっている。人々に予防医療の大切さを伝えると同時に、医療を取り巻く環境も変えていく。そんな取り組みを行っているのが、一般社団法人メディカルライフだ。理事長を務める土師氏に、設立の背景と今後の展望を聞いた。

人々の身体的・精神的な健康とともに健全な社会の再構築を

メディカルライフは、新しい形の健康増進プログラムを提供することで、人々の身体的・精神的な健康を維持し、長い目で見た健全な社会を再構築することをコンセプトにしている社団法人だ。現在の主な取り組みは法人を対象としており、顧客の多くは中小企業。その理由について、理事長を務める土師氏は、働き手不足による採用活動の難しさを挙げる。

「”人財”という表現があるように、社員は会社にとって大切な存在です。労働人口の減少により採用のハードルが上がるなか、社員の心身の健康維持は企業にとっても重要事項だといえます。人財である社員の健康管理への意識を高めることで、離職を防止しつつ、採用活動における自社のアピールにもなります。」

健康を損なってから医療に頼るのではなく、損なわないために先手を打つ。こうした予防医療への関心は、日本ではまだまだ低いという。医師など専門家のサポートを受けつつ予防医療へ注力することで、結果として将来的な医療費を削減していく。それこそが社会の健全な成長へとつながると土師氏は見ている。

医師の働き方への課題意識

メディカルライフの提供する価値は「最善の健康」だが、設立時に抱いていた課題感は別のところにもあったと土師氏は言う。

「全国には素晴らしい医師がたくさんいますが、地方と都市部とのニーズの差が大きく、地方の医師は才能を持っていても埋もれてしまいがちだという課題感を持っていました。また、一人の医師にできることには限度があり、『こういう診療をしたい』と思っていても、日々の激務に追われて着手できない状況があるとも感じていました」

そのような現状を生み出している要因の一つが、日本の予防医療への関心の低さだと土師氏は説明する。発病をさせない予防医療に力を入れるより、病気になってから治療をする方が、時間も費用もかかるためだ。

「そうした状況を打開したい一心でメディカルライフを立ち上げました。このメディカルライフは、次世代へ繋がる医療を追求したいという同じ熱い想いを持つ医師たちが集っています。」

先述した法人向け事業では、社員向けに健康状態を記録するアプリ「ログシル」を監修している。個人の健康状態をそれぞれのスマホに残していき、変調がみられた際には担当保健師からメッセージが届く仕組みになっている。

「病気になる前に先手を打つことは、医療費の削減にもつながります。ただ情報を入力して終わり、ではなく、メディカルライフの担当保健師を中心としたチーム医療で、利用者本人の行動変容につなげていくことが重要なのです」

他業界×医療で新しい付加価値を

理事長という肩書はあるものの、他の医師たちとの関係はフラットだと土師氏は語る。

「日本医療・環境学会臨床研究部会長でオゾン療法のスペシャリストである松村浩道先生」「歯科治療を通じて笑顔を引き出すだけでなく顔ドックで心も顔も歪みを整える小林建先生」「心と体の最適な美しさと健康、そして癒やしをデザインする真弓愛先生」「顎顔面美容治療を主体とした、美的な全身管理を提供する内藤洋介先生」

「年齢は別として、どの先生方も素晴らしい知識や経験を持っています。私はあくまでも束となって強みを発揮できるよう導くだけ。例えるならば、オーケストラの指揮者のイメージでしょうか」

法人向け健康増進プログラムの提供を進めつつ、今後は医療とは異なる業界に関わる個人・企業とタッグを組み、他業種の特色を生かしつつ医師の知見を加えることで新たな価値を生み出す取り組みにも力を入れていくという。

「例えば、料理人とのコラボによる製品・メニュー開発ですね。認知症の予防に役立つ食材を使ったメニュー、メンタルヘルスに効果がある商品など、しっかりとした医学的裏付けのある商品開発にも挑戦しています。料理人を含めた他業種×医師だからこそできること、新たな価値がまだまだ存在すると確信しています」

農業・漁業・宿泊業など、より多くの他業種とのコラボレーションを実現させるのが中長期的な目標で、すでに話が進んでいるものも多いという。

「医学は科学。医師が科学的根拠に基づいた判断をし、お墨付きを与えることで可能性を広げられる取り組みはたくさんあります。今後もさまざまな取り組みを通じて、人々の健康維持へのお手伝いをしつつ、医師自身が無理なく理想とする医療を行える仕組みを提供していきます」

メディカルライフで提供しているサービスの一つが、オーダーメイド医療だ。
健康の基本である食事・運動・睡眠に対して医学的見地からサポートし、個々の悩みに応じて適切な医療サービスを提供する。
その医療には西洋医学だけでなく、東洋医学も含まれる。
また、場合によっては保険外診療の提案も行い、最善の健康を目指していくという。

オーダーメイド医療を可能にしているのは、優れた知見をもつ医師が束となっているメディカルライフの存在だ。
人間の体質・能力に個人差があるように、医師の強みも異なる。
メディカルライフの理念に賛同し、協業する医師が増えたことで、患者の悩みに幅広く対応できるようにもなったという。

医師が束となることで他業種と「医」を掛け合わせ、それにより新たな付加価値を生み出し続け、社会の変革もにらむ。メディカルライフのこれからの活動に期待したい。

土師時成

RECORD

一般社団法人メディカルライフ
理事長土師時成
久留米大学附設高等学校、広島大学医学部を卒業。北海道で地域医療に従事後、2011年に福岡県久留米市で癒しの森内科クリニックを開業。2021年に一般社団法人メディカルライフを設立。