[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

コミュニティで伝えたいのは抽象度が高い視点から見ること

株式会社NINE SENSE
代表取締役
深見
FUKAMI_JUN

生活雑貨などを扱うECを運営する一方で、会員制コミュニティを運営している深見氏。「当たり前とされるものが、実は違うかもしれない。本当のことは表に出てこない」という考えのもと、毎月開催するセミナーでは抽象度を高めるためのものの見方を伝授している。その目的は自身の経験から得られた、物事の本質を捉えるための考え方を啓蒙することだという。より多くの人達に伝えることで、世の中が少しでも良くなることを願っている。

本質を捉える考え方を身につける

若い頃に整体師やセールスマン、資産運用スクールの運営など、さまざまな仕事を経験してきた株式会社NINE SENSEの深見純氏。あるときひとりの女性経営者との出会いによって、それまでの世の中に対する考えが根本から変わった。そして、新しく身につけた概念を、より多くの人たちに広めるために始めたのが会員制のコミュニティ事業だった。この事業を中心に深見氏の半生について話を聞いた。

東京・池袋にある事務所で、NINE SENSEは月に1回の頻度でセミナーを開催。話の中心になるのは、考え方の抽象度を上げることで、その概念を伝えるのがこのセミナーの目的となる。抽象とは具体の対義語で、「多くの事柄から全部に共通する属性を抜き出し、一般的な概念としてとらえること」を指す。

例えば、「犬」と「猫」の両方に共通する属性は「動物」であり、「犬」と「猫」を一つ上の階層にある「動物」として捉えることが、抽象度を上げるということになる。つまり、思考において視点の高さを上げることであり、物事の本質を捉えることと言い換えることができるだろう。「年会費を払うシステムではなく、最初に会費を一括で払うだけでセミナーには継続して参加でき、ズームでの参加や録画した動画の視聴もできる。営利は目的にしておらず、これまでに累計200名以上が入会している」と、5年以上続けているセミナーの概要を話してくれた。

すべてを包摂したときに豊さにつながる

「日本は素晴らしい国なのに、多くの人が不安を抱えながらお金を貯め、資産運用をしている。それは抽象度が低いから。自分だけが豊かになりたいといった低い抽象度ではなく、もっと高い階層から物事を見ることができれば、国や社会はおかしなことにはならない」と力説する。深見氏によれば、抽象度を上げていくと選択肢が増え、ひとつのことにこだわることがなくなるのだという。例えば「お金を得る」、「健康を維持する」という階層のひとつ上に「豊かになる」があり、「豊かになる」ためには「お金を得る」ことでなくても、「健康を維持する」ことでもいいわけである。

実際に借金を抱えながら飲食店を経営していた会員は、こうした概念を受け入れたことで客数を一気に伸ばしたという。「借金を返すために頑張るというのは抽象度が低い証拠。借金は資産であり、ありがたいものとしてすべてを包摂したとき、すべての選択肢が自分の豊かさにつながる。だから食い逃げした人間を追ってはいけない。食い逃げされるほど、うちの料理は美味しいと宣伝すればいい」と、ひとつのことにこだわらなくてもいいことの具体例を説明する。

こうした考えを身につける上で、深見氏が大切にしていることがある。古来より日本人が持っている和の思想である。イエスとノーや陽と陰など、2項を相反させる西洋に対して、日本では古くから陽と陰の両方を包摂するという考えが浸透していた。「だから日本には“水に流す”という言葉があり、すべてを包み込むのが和の思想。昨日までの成功や失敗に捉われることなく、データや経験は積み上げないこと」を大切にしている。

人生を切り拓いた経営者との出会い

コミュニティ事業を始めるきっかけに出会ったのは深見氏が20代の頃だった。地元の高校を卒業後、整体師を目指して東京の専門学校へ進学。卒業してすぐに出張整体院を始めたものの「整体師の仕事は合わなかった」という理由で辞めてしまう。その後、医療機器の販売会社や介護業界で布団をリースする会社など、さまざまな会社を転々とした。しかし、闇雲に転職を繰り返していたわけでなく、「どんな業界にも表と裏があり、本当のことは表にはなかなか出てこない」ため、その世界に一度は入る必要性を感じていた。

「その頃、私はお金をあまり持っていなくて、いろいろなことを経験して豊かになりたいと思っていた。でも、お金持ちでも健康でなかったり、家族関係に問題を抱えていたりしたら、それは豊かとはいえないのではないか」と、悶々とする日々を送っていた。それでも自分の能力を伸ばすために、真実は何かを掴むまで、さまざまセミナーや能力開発プログラムなどに参加し続けた。そんなときにある女性経営者と出会い、一緒に雑貨やサプリメントなどを扱うECを手掛けるようになる。

「彼女曰く“あなたは貧乏をやりたくてやっている。だからやめたいと思えば、貧乏はやめられる”と。何を言ってるのだろうと不思議だったが、貧乏をやめようと思ったら、本当にやめることができた」と、当時を述懐する。そして、新たに立ち上げたECは軌道に乗り、NINE SENSEの屋台骨へと成長した。女性経営者から抽象度を上げるという概念を伝授された深見氏は、世の中を豊かにしたいという思いでコミュニティ事業を始めるようになった。

深見氏は野球部に所属していた中学2年生のとき、時速140kmのボールが投げられないかと思い、色々な情報を集めて独学で学んだことがあった。そのときに実践した理論は、野球部のコーチが指導していたものとはまったく違ったものだった。その経験から「当たり前とされるものが、実は違うかもしれないという視点を常に持つようになった」という。

子供の頃から事実は表には出てこないことを学んだ深見氏。現在は、表舞台で紹介されることが少ない開発者の発掘に力を入れ、新しい技術による優れた製品を世の中に発信していくことに取り組んでいる。そこにあるのは「事実を世に知らしめたい」という思いだ。多くの人たちが本当のことを知れば、世の中は確実によくなると信じている。

深見純

RECORD

株式会社NINE SENSE
代表取締役深見純
1981年新潟県生まれ。整体師の専門学校を卒業後、整体師や医療機器販売会社の営業職などを経て、雑貨中心のECをスタート。2015年に株式会社NINE SENSEを設立。ECをメインの事業とする一方で、営利を目的としない会員制コミュニティ事業を開始。毎月1回開催しているセミナーで、これまでの自身の経験から得たものを伝授している。