[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

心のこもったオーダーメイドの医療をお届けする

医療法人修志会
理事長
西田雄介
NISHIDA_YUSUKE

目の前の困っている人に「まず駆け寄って助けにいく」。それが、医療法人修志会の理事長、西田雄介医師が常に大切にしている姿勢だ。住み慣れた家で患者が主役の診療を行い、共に暮らす家族の思いも汲み取りながら、それぞれの生活環境で安心して過ごせるよう支えていく。そんな、一人一人の患者に寄り添った医療を提供するのが、西田理事長たちが行っている「訪問診療」である。整形外科医として手術に明け暮れていた西田理事長が訪問診療と出合ったのは、一旦医療現場を離れて海外でバックパッカーをして帰国したとき。在宅医療を行っている先輩の医師から、声を掛けられたのがきっかけだった。

患者や家族それぞれの想いにこたえる

西田理事長は、「大きな病院で手術をしていたときは、患者さんを診てあげるという姿勢があったと思います。しかし、訪問診療の場はご自宅で、主役は患者さんであり、介護をされているご家族であり、病状説明にしても相手の気持ちを受け止め、希望を尊重し、的確に話すことが求められました。そうした一つの言葉、声の掛け方、ちょっとした間、表情などで、相手に与える印象や安心感が異なることを学び、非常にやりがいのある仕事だと思いました」と振り返る。そこで2年間従事した西田理事長は、自分でチームをつくり訪問診療をしたいとの思いから、志を同じくする同期の医師と2017年6月に「ファミリークリニック越谷」を開院。
越谷市を選んだのは、埼玉県が対人口比で医師の数が日本一少なく、特に県の東部が医療過疎地と呼ばれるほど深刻な状況だったからだ。法人名は、自分たちの医療に対する「志」を「修める」ことを目指して「医療法人修志会」とし、患者や家族それぞれの思いに応え、その家族らしい生き方を支えたいということから、「心のこもったオーダーメイドの医療をお届けする」を法人の理念に掲げた。

想像以上の訪問診療へのニーズ

その実現のため「しっかり話を聞き、患者さまご家族さま目線の診療を行うこと」「ニーズに対して、できない理由を探すのではなくできる理由を探すこと」「常に最新の知識、技術を修得できるよう努力すること」の3つをスタッフ全員が大事にしている。
開院後は訪問診療へのニーズが想定以上にあり、東京、埼玉、千葉に5院の訪問診療クリニックを展開。それらを中心に、訪問看護ステーション、訪問マッサージ、さらにケアマネジャーの居宅介護支援事業所も設け、様々な専門職がチームとの生活支援も行っている。また、検査機器もコンパクトになっており、以前は病院でしかできなかったレントゲンや超音波などの検査もできるようになっているという。そして何より、患者が住み続けたいと願う環境で医療が受けられることは医師にとってもメリットが多く、診療時間もゆっくり取れ、「患者さんのなかには、がんの痛みを緩和したいと思いながら、薬は飲みたくないという方もいます。そうした場合は、まずマッサージで痛みを和らげ、こういう薬もありますというように、信頼と理解を得て飲んでいただくような、患者さんの思いと向き合った診療ができるのが大きな特徴です」と話す。

訪問診療に携わる専門職を増やす

とはいえ、訪問診療の知名度はまだ高くないという。「介護事業者でも知らない人もいますし、どんな診療をしてもらえるのか、どのように依頼すればいいのか、費用はどれくらいかかるのかなど、皆さんに知っていただく努力がまだまだ必要です」と話す西田理事長。それと同時に、訪問診療に携わる医師や看護師、リハビリや介護の専門職を増やしていくことも課題となっており、社会全体でそうした医療インフラ的な面を整備していかなければならないと指摘する。
現在、医療法人修志会には、非常勤を含め約20人の医師がおり、看護師、セラピスト、マッサージ師などのスタッフも約60人が訪問診療を支えている。患者の訪問はそれぞれの状態に合わせて計画を立て、概ね月に2回の定期訪問と、何かあった場合の24時間対応で、費用的には1割負担で月に6000円程度(検査代や薬代は別途)ということだ。開院から5年が過ぎ、今後に向けてのビジョンを西田理事長に聞くと、短期的な目標は一人でも多くの患者に対応するため、訪問診療のクリニックを10院まで増やすことで、今年の秋にさらに1カ所開院する予定だという。 

その思いは日本の医療全体にも向けられており、「医療を持続的に提供するためには、現在活用が進んでいないDX(デジタルトランスフォーメーション)などにより効率化を進めることが大事です。そうすれば一人の医師が診られる患者さんが増えますし、私たちが患者さんを訪問できるエリアを増やすこともできるでしょう」と話す。
そのためにも訪問診療を世の中にもっと広め、多くの人が知ることで、住み慣れた家で過ごし「いい人生だったと思ってもらえる人が一人でも増えるよう、啓発活動にも取り組んでいきたい」と話す。そして、医療業界が聖域にならず、国家として経済力があることが前提で医療が提供できることも忘れず、診療報酬以外の部分にも目を向けるべきと提言する。
診療報酬のみに頼るのではなく、新たな医療資源の獲得を目指した取り組みとして本格化させようとしているのが投資ファンドで、「予防医学や健康増進を啓発している企業に投資を行い、それにより医療に資金を呼び込んでいきたい」と話す。そして、これらのビジョンを実現するためにも、まずは同じ志を持つ人材を育て、ともにより良い医療を目指していきたいと熱く語る。

西田雄介

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医療法人修志会
理事長西田雄介
広島県出身。修道高校、東邦大学卒業後、初期研修を経て東京女子医科大学病院整形外科に入局。整形外科専門医取得後、海外をバックパッカーで周って帰国。帰国後、広島で在宅医療に身を捧げる父を見習い、在宅医療普及のため埼玉県で開院。現在クリニック5院および関連事業所、投資ファンドを複数展開。