企業の戦略を実行していく上で万全を期すべき組織開発、および人材育成。一方、いかに戦略が緻密でも、遂行する現場のメンバーとの認識に齟齬がある場合もあり、困難を抱えている企業も少なくない。そのような企業の味方となるのが株式会社NOLKAだ。理論的かつ独自のメソッドで人材と組織の課題解決を目指し、日々奔走している。代表取締役の林紀彦氏に同社の事業の独自性について伺った。

企業成長の仕組みを創出する、デザインファームの挑戦

●支援の鍵は「思考と形のデザイン」
同社は人材育成や組織開発をコア事業としているが、決して“教える”ことがメインではないという。事業の独自性について林氏は「当社では成長や課題解決のための仕掛けを創出することを重視しています。例えるなら、水を無理やり飲ませるのではなく、水を能動的に飲みたくなる仕組みの構築。このようなメソッドで企業の人材と組織の成長を包括的に支援しています」と説明する。
例えば、人事制度設計。制度を周知する資料は文字数が多く費やされるケースが往々にしてあり、難解に感じられることも。根気をもって目を通すことでこそ制度の理解を自分事として捉えられるが、多くの人はそれ以前に諦めてしまう。この現状について林氏は「大事なのは人間中心設計。優先すべきは情報の羅列ではなく、伝えることです。だからこそ当社ではクリエイティブを駆使し、次のページが知りたくなるような視覚化も行っています。当社にはデザイナーが在籍しており、デザイン面での入念な監修をしてもらっています」と話す。
仕掛けづくりの一環として“伝える”、“伝わる”ことに妥協しない同社。実際、同社は「思考と形のデザイン」をコンセプトとしたデザインファームの名を掲げている。意欲を促すための人を中心とした仕掛けづくりを思考のデザインとし、そのための手段としてクリエイティブを活用することを形のデザインとしている。
そして、そのアプローチは企業の経営戦略においても同様だ。「戦略について社内で理解を促し、業務に落とし込むことは確かに重要です。しかし、これだけでは不十分で、より具体化する余地があります。つまり、戦略のどの部分を誰に伝え、どのくらいの粒度で、いつから何を行うか、という情報を明確にしなければなりません。これらを文字だけでなく視覚的にも訴えかけることで、一人ひとりに伝わる程度を高められます。そうすることで真の意味で戦略を落とし込むことが実現できるのです」と林氏は語る。
●重視すべきは戦略だけではない
過去の経歴においても事業推進や人材開発、そして組織改革に関わる要職を歴任してきた林氏。そうした経験から、企業の成長は人と組織の質によって決まると考え至った。「企業の戦略と組織は天秤のようなもの。均衡することが大事であり、どちらかが重すぎても軽すぎてもいけないのです。例えば、入念な戦略を立案しても、実行できる人材や組織が整っていなければ前進できません」と説明する。
さらに、「戦略の比重が重くなった時、人と組織の中でできる解決策は、実は三つしかありません。一つ目は社内で最適な人材を探すこと。二つ目は外部から人材を探すこと。この二つは言い換えれば、異動と採用です。そして最後の三つ目が教育。結局、戦略を考えることも意思決定を下すことも最終的には人です。だからこそ、三つ目の教育は重要で、人材育成の手を緩めてはいけないと私は考えます」と語る。
林氏によると、とある大企業には「教育は戦略に先行せよ」という教えがあるという。林氏もまたこの教えに共感した一人。人と組織というミクロとマクロの面からアプローチをすることで、企業の成長を支援する。同社の事業はまさに林氏の考えが色濃く反映しているといえる。
●人と組織と戦略を“つなぐ”
人材育成のためには個々人の成長意欲がキーとなる一方、外的にその重要性を説いても有効ではないケースも多々ある。こうした状況に対して、林氏は人が育つ構造づくりが重要だと指摘する。加えて、一人ひとりに対する役割の明確な定義づけも欠かせないという。「特に役割の定義づけに関しては、根本的なコミュニケーションが不足していることも少なくありません。本来であれば経営や人事、そして現場の視点をつなげる上で非常に大事ですが、ノウハウがなく困難を抱えているケースもあります。そのため、当社ではプロトタイプを形作り、最適化されたソリューションを提供しています。このようなニーズは昨今増加傾向にあり、当社の役割を発揮する機会も増えています」と話す。
また、経営と現場の間の認識齟齬は多く見られ、コミュニケーションエラーが多発しやすい。その現状について林氏は「人材一人をめぐって多くの部署や人が関わっていることは事実。人事企画から採用人事、配属先の育成担当者や管理職などが挙げられるでしょう。一方、それぞれのポジションごとに部分最適化された結果、人物像策定から採用、そして育成の過程で一貫性を欠いているケースが非常に多いのです。例えば、人事企画の想定する人物像と、採用人事の判断にギャップがあるケースです。そして、何より大きな問題はそのギャップを埋め、つなげる人材の不在、およびノウハウの欠如です。だからこそ、当社は部分最適化がもたらした不便さを解消するため、“つなぐ”ことに注力しているのです」と語る。必要不可欠なコミュニケーションを創出し、個々人の内的要因に依拠しない構造を明確につくる。同社は歯車をスムーズに回すがごとく、人と組織、そして戦略をつなぐ役割を担っている。
同社のミッションは「組織に上昇気流を」。林氏はさまざまな手法を用いて、領域にこだわらずにミッションを実現していきたいという。「映像制作やクリエイティブデザインなど可能な手段を組み合わせて、視覚的にもより理解しやすい伝え方を追求していきたい。そうすることで人々をつなぎ、組織開発と戦略実行にもつなげていく。また、学術的な理論も大切です。プロフェッショナルとして、確固とした理論や設計に基づいたソリューションを提供し、当社のあり方を確立していきます」と未来の展望を語る。企業支援のため、人と組織の視点からアプローチする同社。企業の振興を目指し、林氏の挑戦は今後も続いていく。
