[●REC]

ヒトが繋ぐ、時代を紡ぐ

不動産業から多角的な事業体へ。目指すは100歳まで働ける会社

株式会社大生産業
代表取締役
梅村忠生
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1989年に創業し、地域に根差した不動産会社として事業を展開してきた大生産業の梅村氏。2024年で創業35周年を迎える今では、不動産業のほか、保育園や障がい者施設など、別事業も展開。メイン事業である不動産業は、本社を含め5つの拠点を設けている。そんな梅村氏が、ここ数年で新たに目指し始めたのは、「100歳まで働ける会社づくり」だという。なぜ100歳まで働ける会社を目指そうと思ったのか、その理由と今後の展望について話を聞いた。

「日本一あったかい不動産会社」を経営

創業以来「日本一あったかい不動産会社」を理念に掲げてきた梅村氏。その理念を表す特徴の1つが、ノルマについての考え方だ。営業社員にノルマが課せられるイメージが根強い不動産業界だが、大生産業ではノルマを一切設けていないという。

「ノルマを設けると、どうしても目先の数字にばかり気が向いてしまいます。人によっては、そのせいで本質を見失うこともあるでしょう。営業所のノルマを背負う支配人には精神的な負荷がかかり、笑顔を見せられなくなるかもしれない。これも本質を見失ってしまっているからこそ起こることです。では、何が我々の本質なのか。訪れたお客様が気持ちよく帰れることです。営業所に来ていただいた時間が良いものになるよう、お客様には自社オリジナルのお菓子とおいしいお茶をお出ししています。人はほっとすると本音を話しやすくなる。本音を聞いた結果、お客様の幸せにつながらないと思った場合には、お客様の判断と違う方向をご提案することもあるんです」。

ノルマがないことに対し、抵抗感のある社員がいたこともあるのだという。今、目の前でお金が発生しない仕事を、仕事として捉えられなかったからこその抵抗感だったのだろうと梅村氏は見ている。

100歳まで働ける会社でありたい

大生産業のもう1つの特徴は、シニアが活躍している会社であることだ。現在の最高齢は71歳のときに雇用した87歳。2022年、2023年にも60代の人を数名採用している。「縁あってシニアの方を採用したところ、非常に元気いっぱいに働いてくださっている様子が見られ、人は年齢ではないのだなと気付かされたんです」。

パソコン作業すらおぼつかなかった状態で入社した60代の方もいるという。しかし、その人も今では大生産業で活躍している1人だ。梅村氏は「こちら側の接し方、あとはご本人の意気込み。この2点がそろえば高齢の方でも経験を武器に活躍いただける」と語る。

なお、シニアの方を採用するようになり、「働く」ことが人にもたらすメリットにも気付かされたという。

「高齢のお母さまと暮らしていた60代の娘さんが当社で働くことになった際、これまで娘に世話をしてもらっていたお母さまがしゃんとされたのだそうです。そんなお母さまの変化を見て、娘さんも『母がいきいきと生きていくためにも、私も元気に仕事をしたい』と思うようになったと聞きました。今では定年前よりはつらつと働けているそうです。『この年でも働ける』という喜びは、シニアだからこそより大きいのだと思いましたね」

多角的な事業展開で、働ける場所の可能性も広がる

現在、大生産業は野洲本社のほか、守山、瀬田、大津、京都に拠点を設ける。また、不動産業だけではなく、保育園、障がい者施設、看護ステーション、喫茶店、エステ事業と、多角的な事業展開を進めている。

「支社も複数の事業展開も、自分から計画的に進めていったというよりは、周りからの声や縁があって形になっていったというほうが正しいです。例えば、障がい者施設は『大生産業の傘の下で障がい者施設をやりたい』と言ってくれる人たちが現れたのがきっかけなんです。このように何かがあるたび、試されているなと思います。営業所をもう1ヵ所ぐらい出したいなという気持ちはありますが、今後も何かに試されているかのように、1日1日を生きていくことを大切にしたいと思っています。そのためにも、私自身が率先して元気でありたいですね」。

2024年、大生産業は35周年を迎える。「目指すは100歳まで働ける会社なので、私も100歳まで元気でいなくてはならないですね。今は100歳まで働ける身体づくり、人生づくりに楽しく挑戦しています」。

梅村氏は、2024年2月から能登を訪問し続けている。自社で作っているお菓子と酒、水と巻き寿司を、避難所に自ら持参しているのだ。毎月訪問を続ける理由について、梅村氏は「来月も来るからねと言っちゃったから」と笑顔で語る。

「東日本大震災の時と同様、あの映像を目にした途端、命というものを振り返りました。無視できない。思いついたことをする。それだけなんです」。

このエピソードについて、「かっこいい感じには書かないでほしい」と念を押す梅村氏。その語り口からも親しみのある人柄が垣間見える。20年前には業界関連会社とで構成する「大生会」で月例勉強会を発足し、「生き抜く力」をモットーにした基調講演会や音楽会の開催も行っている。こうした取り組みからも、社員だけではなく、地域の方々の幸せを追求している梅村氏の姿勢がうかがえる。

梅村忠生

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株式会社大生産業
代表取締役梅村忠生
滋賀県出身。1979年に中京大学商学部経営学科を卒業。酒販問屋営業員などを経て、1981年に大松商事株式会社に入社。1989年に大生産業を創業、宅建業務を開始。1990年、株式会社大生産業を設立し、代表取締役に就任。同年5月、建築工業業務開始、建築士事務所開設。